第64話「焚火の真実と、もう一人の転生者」
雨が降っていた。
蒼の肩を、紅の手が静かに包む。
「……蒼、また夢に“彼女”が出てきたの?」
「うん。焚火が……俺じゃなくて、“私”に問いかけてきた」
(お前は、誰?――って)
蒼の記憶の奥には、いくつもの“炎”がある。
現世の自分が死ぬきっかけとなった交通事故の業火。
異世界での戦争で焼かれた村。
そして――焚火。あの少女の“感情”。
それらが今の“蒼”という存在の中で、徐々に混ざり合っていく。
その夜、宿の湯屋。
紅と二人、蒼は浴場の湯に身を沈めていた。
「……ふぅ。身体は、慣れたはずなのに……やっぱり湯に浮くこの二つは慣れない」
「……ふたつ?」
「この胸に決まってるでしょっ!!」
蒼が紅を睨むと、紅はケラケラと笑った。
「でも蒼、私からしたら……その身体、反則だよ」
「な、何が……って、おい、ちょ、手、どこ触って――わ、わああっっ!?」
紅が蒼の胸元をつまみあげ、蒼は慌ててのぼせた顔で湯に沈む。
「や、やめろっ!温泉の中でエロテロやめろーっ!」
「ふふ。そういう反応が、また可愛いんだよね」
――じゃぽん、と湯の音がした。
そして、そこに新たな影が現れる。
「ふたりとも……温まってるみたいですね」
「か、楓!?なんで裸で入ってきてんの!?こっちは混浴だけど、一応気にしようよそのボディ!!」
「ん~?だって、蒼ちゃんの顔が真っ赤になってるとこ見たかったし?」
楓は湯の中から大きく胸を持ち上げ、ぷるんと音が鳴るように揺らす。
それを見た蒼の理性が、また一つ飛んでいった。
◆ ◆ ◆
その夜の夢――
蒼は焚火の姿を見た。
「あなたの力、“譲渡”は想いによって変化する。私の“願い”も、あなたの中で育ってる……」
「……お前は、何がしたい?」
「“炎を絶やさないで”。それが私の最後の願いだったから」
焚火がそっと微笑む。
その背後に、見たことのない“少年”の姿が見える。
「彼が、もう一人の……?」
「目覚めの時は近い。烈火の記憶は、あなた一人のものじゃない」
目覚めた蒼の胸が、どくん、と波打った。
(誰かが……目覚めようとしている)
そして、部屋の扉の向こうに、あの仮面の男の影が潜んでいた。




