第60話「影を継ぐ者 ―ZEROの覚醒―」
それは、まるで世界が震えたような衝撃だった。
蒼と紅の激戦から一夜が明けた頃、
工房の地下で、ひとりの少女が静かに目を開けた。
「……来た、か」
ZERO――
影のように静かで、誰よりも闇に溶けていた少女。
彼女の右目を覆っていた眼帯が、ゆっくりと外れる。
金色のオッドアイが、ゆらりと輝いた。
> 《神目・目醒》
《記録されし“因子”が連鎖的に覚醒します》
ZEROの身体に、異変が起きていた。
彼女のコートが自動的に解かれ、
白のゴスロリ戦闘服が静かに現れる。
そして――
> 「蒼、そして……“焚火の影”……次は私の番、ですね」
ZEROは、自分の腕を見つめながら呟いた。
「蒼と紅の感情の連鎖が、私の“記録因子”を呼び起こした……
やれやれ、これが“感情”というやつですか」
口調は相変わらずの棒読み。
だが、その胸には確かに、熱が灯っていた。
◇ ◇ ◇
一方、蒼は翌朝、鏡を見て目を疑っていた。
「……お、おい……また大人っぽくなってないか俺⁉」
思わず鏡の前で胸を抱え込み、
顔を真っ赤にする蒼。
「うう、また肩凝る……」
そこへ、紅が背後から現れ、
そっと抱きしめた。
「いいじゃない……私にしか触れさせないから」
「……紅、朝から飛ばしすぎ!」
そんな2人を、扉の影から静かに観察するZERO。
「……あれが“愛の成長”……恐るべし」
ZEROはスッとフードを被り直し、
ふたりの様子を何食わぬ顔でメモする。
> 『観察記録No.37:蒼と紅、早朝より密着、好感度MAX。
スキル進化の兆候アリ。』
そのとき――ZEROの通信機が鳴る。
> 「……コード・ナンナの残党が、動いたわ」
通信の声の主は、師匠だった。
「蒼たちはまだ知らない。あの影の戦いは、ほんの前哨に過ぎない……」
ZEROは静かに頷いた。
「では、私の任務も――再開、ですね」
彼女は黒コートの裾を翻し、
一筋の光の中へと溶けていった。
◇ ◇ ◇
暗躍する残党組織。
蒼の異世界の記憶《烈火》の痕跡を狙う者たち。
ZEROの覚醒により、ついに闇に蠢く存在が動き始める。
次なる戦いの火種が、静かに燃え始めていた。




