第57話「烈火を継ぐ者、焚火を知る者」
潜入任務当日。
蒼と紅は、闇の中を滑るように駆けていた。
目的地は、他国の貴族が密かに開く“裏競り”の会場。
そこに、国家機密級の《記憶石》が出品されるという情報を得ていた。
「……まさか、こんな形で焚火の記憶と再会するなんてね」
紅の声に、蒼は静かに頷く。
任務の情報の中に、蒼――いや“焚火”が前世で追い続けた《組織》の紋章が記されていたのだ。
「蒼、あの《記憶石》にはあなたの魂の一部が入っているかもしれない。そうよね?」
「うん。何かが……呼んでる。あの石が」
ふと、耳元で声がした。
> 『蒼……燃えて……思い出して……』
焚火の記憶――いや、魂の残響。
蒼の中で、もう一つの声が囁いていた。
そんな折、周囲の空気が一変する。
「来るよ!」
蒼の言葉と同時に、影から現れる黒装束の敵。
その数、十数人。すべてが異国の精鋭忍び――しかも人間ではない。
「――あれは、改造忍!?」
紅が目を見開く。
敵の手には機械のような刃、口元から煙のような毒素を吐き出す。
「来たな、蒼……」
蒼の身体が自然と熱を帯びていく。
腰に装着した“変化鞭”が、赤い閃光を放ちながら形を変える。
《モード:薔薇鎖鞭〈スカーレット・ソーン〉》
蒼が振り払うたびに、鋭い茨の鞭が敵を巻き込み、
その一撃が鎖のように連鎖し、蒼の腕に絡みついた。
「わ、ちょ、また自分に――うわっ!!」
「自爆パターン!? ほらっ、ちゃんと訓練で学んで――」
紅が蒼を引き寄せて回避。
結果、鞭が巻き付いたのは――2人の身体。
紅の胸と蒼の胸が、ぴったりと密着する。
「な、なにこの状況……ッ」
「……あたしの胸が……いつもより大きくなってる気が……」
《スキル:愛の付与──共鳴発動(進化中)》
「蒼、いま変なスキル発動したでしょ!?」
「いや、違う!たぶん……偶然の!」
「これは任務中よ!? なのに私の胸がああああっ!?」
バトルの最中とは思えないほどのドタバタと密着が続く中、
影と楓も援護に駆けつけ、戦場はさらに混乱の渦へ。
「蒼ぉぉっ、あとで説教ね!!」
「うぇえ!? なんで俺だけぇ!?」
――だが、そんな中で。
敵の一人が取り出した小さな石に、蒼の視界が吸い込まれる。
《記憶石》が、淡く赤く光っていた。
「……あれは、“私”だ」
蒼の中で、“焚火”の記憶が呼応する。
そして、紅との“誓いの口付け”が導火線となり、
次の進化――魂の融合への扉が、静かに開き始めていた。




