第54話「仮面の記憶と、誓いの焔」
蒼の胸に残る、奇妙な痛み。
それは、敵が口にした「主」という言葉に呼び覚まされたものだった。
(俺が……アイツらの“主”だった……?)
だが今の蒼には、完全な記憶はない。ただ、焚火として、そして烈火として、“何か”を残してきたことは確かだった。
「蒼、無理しないで」
紅がそっと寄り添う。
その腕が、蒼の腰に自然と絡みつき――んっ?
「うわ、紅……ちょ、そこ、あぶなっ」
いつの間にか紅の双剣の柄が蒼の尻に刺さりかけていた。
「ご、ごめん!ちょっと力入れすぎちゃって!……て、どこ触ってんのよっ!バカ!」
「あ、あっちが先に当ててきたんだろ!?」
姫が思わず、ポカンと口を開ける。
「……あなたたち、仲がいいのね」
「よくない!よくないからね!?ちょっとボディタッチが多いだけで!」
「それを仲がいいって言うのよ……(ボソッ)」
※ちょいエロ・ドタバタ:完備。
その夜、蒼は一人、屋敷の奥で“記憶の夢”を見た。
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【回想:異世界・炎影の城】
かつて、烈火として生きた自分。
《赤蓮》という組織の長でありながら、部下の裏切りに遭い、命を落とした男。
そして、その胸の中には常にひとりの少女の記憶があった。
> 「烈火様……私……あなたのこと……」
その声が、焚火のものと重なっていく――
夢から覚めた蒼は、無意識に手を胸に当てていた。
「……焚火……?」
今の自分に宿る“もうひとつの魂”。
焚火。パルクールの世界で死んだ少女。
自分は、彼女の“身体”で、彼女の“心”を宿したまま生きている。
そして――彼女の“感情”が、紅に向かっていた。
(まさか、俺の気持ちと……焚火の気持ちが、同じ相手に向いてるなんてな)
翌朝。
紅が朝の鍛錬に誘いに来ると、蒼はしっかりと向き合った。
「紅……あのさ」
「な、なに? 朝からそんな真剣な顔して……」
蒼は口を開く。
「俺さ……お前のこと、本気で――」
その時、紅のほうが、そっと蒼にキスをした。
「……言わなくていい。私のほうが、先に“愛してる”って気づいたから」
2人の唇が重なる。
光が差し込む。
そして、次の瞬間――
> 《譲渡スキル:融合型進化 “真愛共鳴” 発動》
> 《スキル相互補完、戦闘連携強化、感情共鳴による身体能力上昇》
──彼らの想いが“力”になる。
そして、再び《赤蓮》が牙を剥く。
次なる任務――“炎影城”への潜入が、始まろうとしていた。




