第52話「焚火と烈火の約束」
静けさに包まれた朝。
だが蒼の胸の内は、ずっとざわついていた。
(あの仮面の男、俺の知っている動きだった。焔隠一門……まだ終わってないのか?)
紅がそっと寄り添う。
「蒼、大丈夫?」
「……ああ。ちょっと昔を、思い出しただけだ」
蒼は記憶の奥底にある“もう一つの火”を思い出していた。
焚火――現世で事故に遭った少女。
そして烈火――異世界で命を散らした少年。
それがなぜ、今“自分”という存在としてひとつに重なっているのか。
──夢を見た。
小さな焚火が言った。
> 「ねえ、烈火くん……もしまた生まれ変わっても、絶対、絶対に――」
烈火は微笑んで、彼女の頭をなでた。
> 「ああ、見つけてやる。どんな姿になっても、魂が分かってるからな」
目覚めた蒼は、汗をかいていた。
けれど、胸の奥に少しだけ温もりを感じた。
(焚火……お前との約束、まだ続いていたんだな)
◇ ◇ ◇
その日、任務は動き出した。
姫の護衛任務だが、彼女が蒼に懐いているのは明白だった。
「蒼様、朝食をご一緒してくれませんか?」
「“様”はいらない。……てか、なんで俺?」
「あなたの強さ、知ってますから」
紅の顔がピクッと動いた。
「……蒼、何かあったら呼んでね?」
「え? え、うん」
(え? なんだこの妙な空気!?)
護衛任務は順調……かと思いきや、またもや不穏な影が迫る。
敵が残した“紋”は、かつて烈火が滅ぼしたはずの秘術結社《赤蓮》のもの。
「赤蓮……まさか、こっちの世界でも……」
姫は怯えながら、蒼の袖を掴んだ。
「こわい……でも、あなたがいれば……」
(あ、これ……完全にフラグ立ってるやつだな)
すると、不意に紅が背後からピタリと蒼の肩に抱きつく。
「蒼は私の“影”だよ。他の誰にも渡さない」
耳元で囁かれ、蒼は思わず心臓を跳ねさせる。
「な、なに言ってんだよ、紅……っ」
「だって蒼、あんなに熱く私のこと好きって……言ったじゃない?」
「~~~ッ!!?」
姫「……あら?」
その瞬間、譲渡スキルが静かに反応した。
> 《スキル《譲渡》変化確認。対象“感情領域”へ拡張中》
二人の想いが熱を帯びて、新たな力を目覚めさせようとしていた。
──それが、“炎”の記憶を呼び起こす鍵になることも知らずに。
◇ ◇ ◇
任務は続く。
だが、愛と記憶、そして《譲渡スキル》の進化が、物語を新たな段階へと進ませようとしていた。
蒼の中の“烈火”と“焚火”。
そして、今ここにある“紅”との愛。
すべてが交錯する時、彼女たちは運命と再び向き合うことになる。




