第50話「記憶の棘(とげ)と、現れし影」
「蒼、外……ただならぬ気配がする」
紅の言葉に、蒼はすでに動き出していた。
昨夜の“共鳴”以降、体内の力が明らかに変化していた。
紅と触れ合うだけで、鼓動がリンクし、力が溢れる。
そして今、その力が“何か”を警告していた。
夜明け前の宿。
そこへ――風を裂くように、忍び寄る黒き影。
「見つけたぞ、“転生者”」
声が届くより早く、影は蒼の懐に飛び込んできた。
その動き――“見覚え”があった。
(この動き……知ってる……!)
反射的に身を翻し、蒼は鞭を振るう。
だが、その刹那。
黒影の手が蒼の頬に触れる。
《記憶断片 回収開始》
脳裏に走る、焼きつくような“記憶”のフラッシュ――。
──砂塵舞う戦場。
──幼き日、“烈火”と呼ばれていた少年の姿。
──そしてその傍らに、“焚火”という名の少女が……
「……嘘だろ……!」
思わず、蒼は膝をついた。
頭を抱え、息を荒げる。
紅が蒼の肩を支える。「蒼、しっかりして!」
黒影は微笑む。「思い出したか?かつてお前を育て、殺したこの俺のことを」
「……テメェ……“アスモ”……!」
その名は、烈火時代の記憶――
“育ての親”であり、そして“最初の裏切り者”。
アスモの手には、黒炎の刃。
「懐かしいな。“あの時”と同じだ……今度こそ、仕留めてやる。お前の魂ごと」
だが、蒼の隣に紅が立つ。
「蒼は――ひとりじゃない!」
紅の双刃が、交差する。
次の瞬間、共鳴スキル《双響》が発動し、二人の力が再びひとつになる。
「……紅。いくぞ」
「ああ、蒼!」
蒼の鞭が形を変える――**黒鋼の刃鞭**へ。
紅の双刃は紅蓮の刃へと変化し、轟く炎を帯びる。
「二人の想いで、過去の影をぶっ飛ばす!」
「お前を乗り越えなきゃ、“今の私”にはなれない!」
闇夜に響く、ふたりの咆哮。
想いと記憶が、力となり、炎となって、過去を焼き尽くす。
――だが、その戦いは、まだ“序章”にすぎなかった。
アスモの背後に立つ、謎の仮面の人物。
その存在が、ふたりの運命を大きく揺るがすこととなる。




