第48話「ゆれる想い、交わる鼓動 ―譲渡スキル・共鳴―」
夜――任務の一環で訪れた屋敷の離れ。
予想外の雨に見舞われた彼女たちは、急きょ同室で一晩を明かすことになった。
「……にしても、狭いって……っ!」
紅は困惑した表情で、蒼が布団の端にギリギリ身体を寄せている様子を見て、ぷいとそっぽを向いた。
「そんなに距離取られると、逆に失礼じゃない?」
「ち、違う! ほら、その……紅、すごく柔らかいし……ぶつかったら、アレだし……」
蒼は顔を真っ赤にして、必死に言い訳をする。
その言葉に、紅もまた顔を赤らめて俯いた。
「……じゃあ、もう、触れてればいいでしょ」
ぽすん。
そう言うや否や、紅が静かに蒼の肩に頭を預ける。
ドクンと心臓の音が跳ねたのは、蒼だけではなかった。
(――ああ、やばい。俺……いや、“私は”。本当に……)
蒼は知らず知らず、紅の温度に慣れ始めていた。
ただの仲間ではなく、彼女の笑顔に安らぎ、言葉に救われ、今や胸の奥が疼くほどに――惹かれていた。
「蒼」
不意に、紅の声がそっと落ちる。
「私、知ってたよ。……あんたが、この世界の“普通”じゃないって」
蒼は目を見開いた。
「でもね。蒼が、蒼である限り……私は、あんたの味方だから」
その瞬間――
《譲渡スキルが反応しました》
《条件:感情の極限到達を確認》
《進化条件、達成値78%……感情リンク、継続中》
蒼の胸元がかすかに光を帯びた。
肌に直接触れる紅の指先からも、ほんのりと同じ輝きが伝わっていた。
「……なに? これ……?」
紅が不安そうに尋ねたが、蒼は自分の胸元を押さえて答えた。
「……譲渡スキル、かもしれない。
たぶん、俺たちの気持ちが、なんか――共鳴してる」
紅はそれを聞き、少しだけ照れくさそうに目を逸らした。
「……バカ。そんなの……こっちが先に“共鳴”してたんだからね」
そして。
そっと、紅が蒼の手を握った。
言葉は少なかった。
けれど確かに、あたたかさが指先から伝わる。
それは、心が触れ合う感覚だった。
外は雨。
でも、ふたりの間には、やわらかくて、やさしい空気が流れていた。
やがて、眠りに落ちていくふたりの間に――
静かに進化する“想いの力”が芽吹こうとしていた。
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