第57話『焔の記録、そして―』
「この記録、あなたたちに託します」
現れたのは、異国の装束に身を包んだ少女だった。
肩までの銀髪を揺らし、彼女は蒼たちに一冊の古書を差し出した。
名はユナ・ヴァル=フォルス。
“記録守”と呼ばれる、世界の“転生と魂の繋がり”を記録する一族の末裔。
「これに記されたのは、“烈火”と“焚火”……そしてあなた、“蒼”の魂の旅路」
蒼は、言葉を失った。
「……知っていたのか、俺たちのことを」
ユナは小さく頷いた。
「あなたは、転生を繰り返す者。“選ばれし器”……でも、今回は違う」
「違う?」
「“誰か”が……あなたに“干渉”してきた。あなたの魂は本来、分かれることのないはずの存在を、二つ抱いている。烈火と焚火――その両方を、ね」
蒼の中で、確かに揺れていた感情があった。
烈火の勇猛さ。焚火の優しさ。そして、今の“蒼”としての意思。
「……俺は、誰なんだ?」
「“まだ完成していない存在”――でも、それは“可能性”ということ」
「おいおい、難しい話はあとにしようぜ」
紅が割って入る。
「蒼は蒼よ。……それだけでいいんじゃない?」
「紅……」
「それともなに? あたしが抱きしめて、“お前はお前!”って、証明してやろうか?」
「ちょっ、今そのテンション!?(いや、ちょっと嬉しいけど)」
楓がそっと手を挙げる。
「わたしも……やさしく包みます」
「ちょ、オイ、お前まで!?(むねで!?)」
影(ZERO)は静かに背後で呟く。
「……私が本気出したら、蒼が壊れるから遠慮してるだけ」
「お前もかよ!!?」
◆ ◆ ◆
その夜、蒼は再び夢を見る。
そこには、かつての烈火と焚火がいた。
彼らは向かい合い、こう呟いた。
烈火「次の世界で――また誰かを、守ってやれ」
焚火「そして今度は、自分のことも、愛してあげて」
二人は、微笑んで蒼へと融合していく。
目覚めると――蒼の胸の奥に、新たな“熱”が宿っていた。
「……ありがとう。俺は、俺として、生きる」
だがその頃。
遠く離れた東の地で、焔の中から一つの影が姿を現す。
《封焔ノ鬼影》
かつて烈火を討たんとした、異界の強者。
「目覚めよ、選ばれし器……魂の残火よ……お前を喰らう刻が来た」
世界は再び揺れ始める――。




