第56話『過去に触れる者たち ―封印の炎―』
蒼は、手のひらの石板を見つめていた。
“神の記録”。
未来を写し、定めを刻むとされる古代の遺物。
そこに刻まれていたのは――
烈火と焚火の死の瞬間、そして転生の光。
「なぜ……俺たちの姿が……」
「これは、はるか昔……異界の巫女が“見た”未来らしいの」
リアナ姫が、静かに告げる。
「“世界が滅ぶ前に、二つの魂が交わる。ひとつの器に、二つの力。世界を繋ぐ架け橋となる”……」
蒼の脳裏に、烈火と焚火の記憶が重なっていく。
――滅びの戦場。
――交わる約束。
――その果てに、焚火が呟いた言葉。
「今度こそ、一緒に生きたい……」
その瞬間、蒼の胸が焼けつくように熱くなった。
(焚火……)
背後で、紅がそっと蒼の背中に寄りかかる。
「……蒼。もし、あの子の記憶が戻っても、私はあなたを……」
「紅」
蒼は振り返り、そっとその頬に手を添える。
「俺は、蒼として生きる。烈火や焚火の記憶は、確かにある。でも……今の俺は、ここにいて、お前と共にある」
紅の瞳が潤む。
「……バカ。あんたって、ほんと、ずるいんだから……」
* * *
その夜――
蒼はひとり、屋敷の離れに座していた。
焚火と烈火の記憶が交錯する夢を見る。
夢の中、彼女(焚火)は、泣きながら微笑んでいた。
「また、会えたね」
(……待ってろ。全部、思い出してみせる)
その背後で、影(ZERO)がそっと佇む。
「……記憶は、武器にも毒にもなる」
「……お前、ずっと見てたのか?」
「任務、だから」
淡々と答えながら、ZEROは蒼の隣に腰を下ろす。
「でも、私は“今の蒼”が好き。烈火でも、焚火でもない、蒼」
蒼は思わず吹き出す。
「……言うじゃねえか」
「……言わされた。姫に」
「だよな!? 急にキャラ違ったぞ!」
と、そこへ――
「蒼ぉぉおお!? 私の出番まだぁあ!?」
バスタオル姿で乱入する紅!!
「お風呂上がり、さっきの告白の続きを聞きたいんだけどぉおおお!?///」
「今かよっ!!」
「いや今でしょ! 私、正ヒロインなんだからっ!!」
「くそっ! なんでこう、ドタバタすんだよぉおおお!」
「蒼がイケメンだからだろッ!!」
「わたしも混ざりたい……(←楓、バスタオル姿でそろり登場)」
「やめろぉぉぉぉおお!! 鎮まれ俺の理性ぃぃいい!!!」
だがその頃。
影の裏で、黒き炎が密かに揺らめいていた。
《神喰ノ影》の真の長が、次なる一手を打つべく動き出す――。




