第52話『“再会”と“名前”――かつての炎』
その夜明け――
王宮の警備詰所に、一本の“血のように赤い巻物”が届けられた。
「……これ、蒼様宛に届けとけってさ。無記名だけど、妙に厳重でな……」
番兵が差し出した巻物には、見覚えのある“炎をかたどった封蝋”が施されていた。
蒼は無意識に震える手で、それを受け取った。
(この印……間違いない、“烈火”のもの……)
周囲を離れ、蒼はひとり自室で巻物を開く。
紙にはたった一文。
> 『次の満月、“記憶の井戸”で待つ。――紅蓮』
「紅蓮……!?」
――かつて、烈火だった頃の“兄弟弟子”。
いや、それ以上に、最も近く、最も遠く、そして最も…哀しい“絆”を持っていた相手。
(奴も……転生していた……?)
蒼は胸の奥に、熱く、苦いものを感じていた。
「会うべきか……それとも……」
背後から声がかかる。
「迷ってる顔してる」
振り返れば、そこには影――ZEROの姿があった。
「……覗き癖、ほんと治した方がいいと思うわよ」
「……蒼、目が泳いでる。なにか怖いんだね」
「……!」
影はそっと、蒼の手を取った。
「……でも、あなたは“蒼”でしょ? 烈火でも焚火でもない、“今”を生きてる。私は、今のあなたが……好きだから」
珍しく、感情のこもった言葉だった。
その言葉に、蒼の胸が静かに揺れる。
そこへ楓と紅が飛び込んでくる。
「蒼っ!! なんか物騒な情報が――敵の残党、また動いてるかも!」
「それに加えて……あの姫、蒼の寝巻き姿のスケッチ、完成させてたわよ!」
「な、なんでよぉおおお!!?」
嵐のような一日がまた始まる。
だがその裏では、静かに“過去”が蠢き始めていた。
“紅蓮”――烈火のかつての“もう一つの可能性”が、いま現世に歩を進めようとしている。




