第50話『護衛戦 ―雷鞭と紅蓮の刃―』
王宮の庭園に、黒い影が降り立った。
それはまるで、地の底から湧き出た瘴気のようだった。
「“虚式魔族”……!」
影が呟くと同時に、蒼の全身が緊張を走らせる。
人型を模してはいるが、その表皮はどろりと溶けた墨のようで、顔という概念すら曖昧だった。
「……姫は絶対に守る」
蒼はそう呟くと、腰に巻かれた鞭をスッと手に取り、指でなぞる。
瞬間、革の鞭が鎖鞭に。そして、雷のような魔力を纏ったアーマーが蒼の腕に出現した。
「アーマー鞭・雷鎖――!」
第一の影に飛びかかり、蒼の鞭がうねる。
ギャリッと音を立て、鞭の先が敵の肩を抉るように突き刺さった。
そのまま、雷撃が走る!
「楓っ!」
「はいですっ!」
メガネがキラリと光り、空中に敵の位置と魔力流動をリアルタイムで表示するホログラムが展開された。
「敵の“核”は背中の中央、今です蒼さんっ!」
蒼は鞭を巻き付け、空中で跳躍。しなやかな身体が優美に宙を舞い――
「これで終わりっ!!」
ドゴォン!
一撃が敵を貫いた瞬間、紅の双刃が燃えるような紅蓮の輝きを放ち、敵の後方を断つ!
「斬炎・双舞――!」
二人の連携攻撃が決まり、魔族の影は呻きながら消滅していった。
「……蒼、大丈夫?」
紅が駆け寄り、蒼の手を取る。その瞬間、蒼の頬が微かに赤らむ。
「う、うん……って、ちょ、ちょっと近いってば、紅……!」
「ふふ……だって、心配したんだから」
そのやり取りを見ていたリリスが、思わず微笑む。
「あなたたちって、まるで恋人みたいね」
「なっ……!? そ、そそ、そんなことはっ!」
蒼は慌てて否定するが、紅の方はにやりと笑って肩を寄せる。
「ねえ、蒼……あとで“私の部屋”で、ちゃんと休んで行かない?」
「や、やだっ! もぉー……っ!」
(※紅の“本気”はどんどん進行中です)
その頃、影(ZERO)は倒れた魔族の体の一部から何かを発見していた。
「……この魔力痕跡、どこかで……」
コートの猫耳がピクリと動く。
(“あの組織”の匂い……“烈火”が関わった存在だ。まさか……)
誰にも見せぬ表情で、影は小さくつぶやいた。
「……次の戦いは、過去に繋がる」
その言葉の意味を、蒼たちはまだ知らない。
けれど確かに、物語は“核心”へと進み始めていた――。




