第6話「忍者寮、忍務開始!制服と訓練と羞恥心」
朝――
「はいっ、今日から寮での共同生活、がんばってくださいねっ!」
元気いっぱいの教官くノ一が笑顔で蒼たちに言い放つ。
その手には、標準忍務制服と呼ばれる――いや、もはやただの露出高めな戦闘衣装が。
「ちょっと待てッ……これは、どこが“標準”なんだ!?」
蒼は自分の姿を見て、思わず叫んだ。
――薄手の黒布が、要所をぎりぎり隠すくノ一スタイル。
スリット深め、背中は全開、胸元のホルダーは無駄にフィット感。
その上、脚にはガーターベルト状のポーチ。どうしてそこに手裏剣入れる必要が……?
「蒼、その……似合ってると思う……ふふっ♪」
楓がメガネ越しに優しく微笑む。
「ほら、これ、素材は最新ナノ繊維。斬撃も軽減するんだよ」
「いやっ!防御力とか以前に、揺れるのが問題なんだよ!歩くたびに自分で気になるんだよコレ!」
蒼の身体は、かがむたびに「物理法則」が反逆してくる。
立ち回れば揺れ、跳ねれば舞い、忍務どころではない。
一方――
紅はいつも通りの無表情で短剣をメンテナンスしている。
「……気になるなら、抑え込む訓練、付き合ってやるよ」
「いや抑え込むって、物理的に!? なんか誤解生まれるからやめろ!」
ZEROは相変わらず黒コート姿。
「……制服、着ていないのか?」
蒼が問うと、ZEROは一言だけ答えた。
「……下には、着てる」
「そういうのが一番気になるやつーーッ!!」
◆
その日の午後――
蒼は初の“忍務”に就く。
任務は「隣町への薬草の護送」
だが、途中で**野盗化した魔獣獣人**に襲撃を受ける。
「チッ、こんなときに限って武器がっ……!」
鞭を手にした蒼。
気合と共にその“感情の揺れ”に反応し――鞭は鋼鉄鎖のような光沢を持つ“鎖の鞭”へと変化。
「くらえぇぇええっ!! これが……揺れるけど強いボディの力だあああっ!!」
鞭がうなり、獣人たちを次々になぎ払っていく。
だがその勢いで――
ビターン!
「うぎゃっ!? また自分に巻き付いたっ!?!?」
◆
任務終了後、寮に戻った蒼は、ぐったりと畳に倒れ込んだ。
その脇に、メガネ姿の楓が氷嚢とミルクティーを差し出す。
「蒼くん、お疲れさま……はい、これ。ちょっと熱もってたよ?」
「あ、ああ……ありがと……ていうか、俺って、こんな毎日になるの……?」
誰かがくすくすと笑う。
ZEROが、珍しく口元を緩めたようだった。
「……騒がしい方が、……生きてる感じがする」
蒼は、もう一度、遠くを見つめた。
この世界に来て、少しずつ――自分の“居場所”が形を持ち始めているのを、感じていた。