第42話「仮面の影と“刻まれし者”の記憶」
湯けむりに包まれた夜が明け、蒼たちは早朝から任務地へ向けて移動していた。
だが、あの温泉で見えた“黒い印”と、ZEROの言葉が頭を離れない。
(“刻まれた魂”……。やっぱり俺の中には、俺だけじゃない“何か”がいるのか?)
不安をかき消すように、蒼は胸元に巻きつけた“鞭”を軽く叩いた。
鞭は蒼の気持ちに応えるように、ぎゅるんっと動き、スカーフのように体に巻き付いたまま静かに佇んでいる。
「なに、真剣な顔して。おっぱいのことでも考えてた?」
「おい紅、そういうの大声で言うなって!」
「えっ、違うの? 昨日、自分で“重すぎるって肩凝るんだよこの乳”って言ってたじゃん?」
「わーっ!! 黙れ! 言ったけど黙れ!!」
楓はクスクスと笑いながら、情報端末内の地図を操作していた。
「蒼ちゃんたち、ちょっと静かにしてね。そろそろ目的地に到着よ~♪」
「ってか、この任務って……他国の姫の護衛だっけ?」
「うん、“月影の国”の第三王女、リアナ姫の警護だって」
ZEROが口を開く。
「月影の王族は、代々“異世界と繋がる門”の管理者だと言われている。蒼、お前の記憶と関係しているかもしれない」
「――ッ」
その言葉に、蒼の心臓が一瞬止まったような気がした。
(“門”……そうだ。確か……あのときも……)
《焚火! 早く、あの門に! 閉じるな! まだ俺が――!》
《烈火っ!? 戻って……! わたし、もうすぐ、君の所に――!》
脳裏を過ぎる“二人の声”。
混ざり合い、交わり、別れ――そして今、ひとつになっている。
そのとき、森の中に気配が走った。
「来るよ!」
紅が素早く双剣を構え、ZEROはマントを翻して影へと溶けた。
木々の影から現れたのは、仮面の忍数名。黒い装束、そして胸元に同じ“印”が浮かび上がっている。
「“仮面ノ影”……」
ZEROが低く呟く。
「奴らも……お前の記憶を追っている。“烈火”としての、お前のすべてを」
「だったら……!」
蒼の鞭が伸び、空を裂いた。
気持ちの高まりに応じて、**“棘の鞭”**へと変化する。
さらに腕に巻き付き、アーマー状の防具と化す。
「行くよ、あたしは……俺は、今度こそ逃げない!!」
鞭がうなり、空を舞う。
次の瞬間――ド派手な忍術戦が幕を開けた。




