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第37話「忍び寄る影、烈火と焚火の記憶」



 


深夜。


風が唸るように吹きすさぶ森の中。


その音に紛れるように、影がひとつ、宿の屋根へと忍び寄る。


 


――カッ。


仮面をつけた者が一人。黒装束に身を包み、目だけが鋭く光っていた。


その者は、静かに囁いた。


「……ついに見つけた。“転生者”よ」


 



 


「ん……? な、なんだ……この夢……」


蒼は浅い眠りの中で、ある光景を見ていた。


 


焼け落ちる砦。


血まみれの自分の手。


遠くで泣く少女の声。


 


そして、火の中に立つ――もう一人の自分。


 


「……烈火、なのか……?」


かつての名を、口にした瞬間――


 


《焚火ッ!逃げろ!!》


《烈火ァ!置いていかないで!》


 


交錯する二つの記憶。


幼い少女の姿。愛おしい誰かの声。


そして、別れと死。


蒼の中に眠っていた、**“焚火”と“烈火”**の魂の痕跡が疼き始めていた。


 



 


「蒼、起きて!敵襲よ!」


紅の叫びで飛び起きた蒼は、即座に鞭を手に取る。


「クソ……さっきの夢、何なんだ……!」


 


宿の外に出ると、既に戦闘は始まっていた。


黒装束の襲撃者たちが、複数。


「――貴様ら、何者だ!」


紅が双剣を構え、血走った目で敵を睨む。


「“彼”を……いや、“彼女”を、連れて帰るだけです」


仮面の男は、そう言って蒼を指差す。


「烈火様。焚火様。いずれにしても、お戻りいただきましょう――“主の元”へ」


 


「おいおい……どこで聞いた名前だよ……!」


動揺を隠せぬ蒼に、影(ZERO)が囁く。


「……彼らの声、なぜか聞き覚えがある。これは、あなたの“前の世界”と繋がってる可能性がある」


 


だが、蒼の身体はもう戦闘態勢に入っていた。


「だったら――話は後だ!」


 


鋭く走る蒼の鞭が、敵の一人に巻きつく。


その瞬間、鞭は黒光りし、硬質化。


「――《変化・鋼蛇鞭》!!」


鞭が鎖となり、敵を引き倒す。


さらに蒼の身体に巻きついた鞭は、**“鞭鎧”**として変化、身体を包む。


 


「おぉ……蒼ちゃん、ついにアーマーモード!」

楓が目を輝かせる。


「その格好、ちょっとエロすぎるけど……ま、今だけは許すわ」

紅も頬を赤らめながら、援護に回る。


 


だがその最中――敵の一人が、蒼に囁く。


「烈火様……私たちは、あなたを救いたいだけなのです。あの日の“約束”を、あなたは――忘れたのですか?」


 


その声に、蒼の脳裏に響く。


“あの日”、焚火に言った言葉。


そして、別れの前に交わした“誓い”。


 


――《必ず、お前を守る》


 


「う……うるせぇ!!」


怒鳴り、蒼はその敵を薙ぎ払う。


だが、敵の言葉は確かに、蒼の“魂の根幹”を揺らしていた。


 



 


敵は退けた。


だが、蒼は戦いの余韻の中、膝をついたまま動けずにいた。


「……俺は……本当は、誰なんだ……」


 


紅が静かに近づき、蒼の背に手を置く。


「蒼。どんな過去があっても、今のあんたが、あたしの知ってる“蒼”なんだからね」


 


その言葉が、深く胸に染み渡った。


そして――蒼の中で、もうひとつの記憶が眠りから目覚めようとしていた。


 





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