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第36話「“愛の付与”ふたたび? 姫と紅、揺れる乙女心」



 


「――これは、感情の暴走によるスキル発動だな」


楓が眼鏡をクイッと上げながら、事も無げに告げた。


 


その瞬間、姫の身体から微かに放たれた光。


それは、かつて蒼が“紅”に対して発動した、**『愛の付与ラブ・インプリント』**に酷似していた。


 


「まさか……また俺のスキルが暴走……?」


「蒼……お前さ、無自覚に“惚れさせる系チート”でも持ってんの?」


紅がジト目で睨む。しかも、何故か顔が赤い。


 


「……し、知らねぇよ!てか俺、惚れさせるつもりなんて――」


「ふぅん……でも、姫の胸、ちょっと盛られてない?」


「えっ、まじで!?」


 


たしかに、ほんのわずかに“豊か”になったような……。


「……これは確かに、“転写”の影響ですね」と楓。


「愛と想いを、肉体にも反映させる……すごいスキルだと思うよ?」と、ややニヤつきながら影が呟いた。


 


紅は腕を組んで顔を背ける。


「ふん、別にいいけど。どうせ蒼は鈍感だし。あたしなんか……」


「……ん?今、何か言ったか?」


「言ってない!!」


 



その夜。


警護先の宿にて。


 


「蒼様。今日の出来事、私は一生忘れません……」


シズナ姫が、蒼の布団の隣に正座していた。


「……いや、寝ろよ。てか何で隣!? 忍の夜は早いんだぞ」


「この胸の高鳴り、どうすれば良いのです……?」


「知らねぇよ!!てか服着て!? なんで浴衣はだけてんの!?」


 


バサァッ!!


紅が障子を蹴破って登場。


「ちょっと姫、あたしの蒼になにしてんのよ!」


「“あたしの”とはどういう意味でしょうか?」


「い、意味とか別にないけど!あたしが先に惚れてたの!!……かも、しれないじゃん……」


 


「うぅぅぅ〜〜〜……やめてくれ、俺の精神がもたん……」


蒼は枕をかぶって叫んだ。


 



その翌朝。


マッサージタイム。


楓が蒼の肩をぐいぐいと揉む。


「また凝ってるね、蒼ちゃん……姫様との接触で、緊張した?」


「いや……主に“胸”の重さのせいだと思う……」


「そうだね〜。でも紅ちゃんは“胸の代わりに気持ちの重さ”で勝負してるんだよ、きっと」


「……ああもう、なんなんだ俺の人生」


 


 


だが、その背後――


森の影に、再び“仮面の影”が現れ始めていた。


そして、蒼の記憶の底に沈む、“烈火”と“焚火”の名前が、じわりと浮かび上がろうとしていた。


 




 






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