第34話「蒼 vs 黒幻 ―過去と現在の交差―」
「ハァッ!!」
蒼の手から、黒革の鞭が飛ぶ。
鞭は風を切りながら鎖のように伸び、黒幻の攻撃を弾いた。
「ふむ、やはり“烈火”の技だ……だが」
黒幻が影のように瞬間移動し、背後へ回り込む。
「甘いな。お前の身体は“女”。以前とは違う!」
「……舐めんなよ!!」
蒼の背中に張り付いていた黒鞭が一気に収縮する。
《蒼の鞭・形態変化:刺薔薇の鞭》
鋭く赤黒い刺を持った棘鞭が爆ぜるように咲き、黒幻の腕を縛り上げた!
「ッ、なっ……!」
「お前に“女の身体”がどうとか言われなくても……この身体、
俺が“全部”引き受けてんだよ!!」
蒼の声に、仲間たちが駆け寄る。
「蒼! 私たちも戦うよ!」
楓のハンマーが巨大化し、空間ごと地面を叩き割る。
紅の双刃が一体化し、赤い薙刀となって黒幻を襲う。
だが黒幻は、空間そのものをねじるスキルで防御。
「フフ、これが“異界の技術”だ……受けてみろ!」
黒幻の掌から放たれたのは――
過去、烈火を倒したとされる“虚空裂断”。
空間そのものを断つその技に、蒼が目を見開いた。
(来る――でも、今の俺は――)
瞬間、胸元に触れた紅の視線。
過ぎった温泉でのキス。
“譲渡スキル”で共有された感情と、紅の想い。
(俺は……ひとりじゃない)
「――影!」
「了解」
影の声が低く響き、眼帯が外れた。
黄金のオッドアイが見開かれ、神目が発動する。
「“虚空裂断”……時空歪曲スキル。発動領域、25.3平方m。回避可能」
「ありがとう……よし、やるか!!」
蒼の鞭が変化する――
《鞭:装甲化形態》
鞭が蒼の身体を包み、鎧のように纏われる。
胸元は強調されたまま、腹部と太腿に黒く光る装甲が!
「ちょ、ちょっとエロくね!?」
「集中してぇ!!」
一斉に攻め込む4人。
楓のハンマーが黒幻の足元を砕き、紅の双刃が空中で交差。
影の大剣が放つ斬撃を、蒼の装甲鞭が振動させて拡散!
「――決める!!」
蒼は跳躍する。
宙に浮いた瞬間、背中の鞭が翼のように広がり――
「これが……俺の“現在”だッ!!」
《蒼奥義:双魂蒼閃撃》
紅と楓の技がリンクし、
影の斬撃と共に――
すべてが、黒幻を包んだ。
──ドンッッ!!!
爆風のなか、仮面が砕ける。
中から見えたのは、かつて烈火を倒した者ではなく――
もう一人の“烈火”に似た顔。
「……まさか、俺と同じ転生者……?」
しかし、黒幻はそのまま霧のように消えていった。
「……まだ、“何か”隠してるな」
蒼は、拳を握った。
◆
その夜、紅がひとこと呟いた。
「ねえ……今日の蒼、ちょっと……格好よかったよ」
「……マジで?」
蒼は頬を赤くし、
“また何かスキルが発動しそう”な気配を感じて慌てて部屋を飛び出す。
背後で、紅がぽつり。
「……ずっと言いたかったんだけどなぁ。
私、アンタが“俺”でも“私”でも、どっちでも好きなんだけど」
小さく囁かれた本音は、
蒼にはまだ届いていない。
──風が、蒼の胸元の装甲をくすぐっていった。




