第31話「揺れる想いと、姫の告白」
護衛任務のため訪れていた他国・セレーネ王国の宿舎。
戦闘後の一息もつかの間、ジリジリと蒼の周囲の空気が変わっていた。
「……なぜ、私の部屋にお呼びしたのですか?」
紅が半眼で睨みつけている。
蒼は、慌てて両手を上げた。
「違うっ!違うって!これは姫さまがっ……!」
そう、すべての始まりは――
「お話があります」と言って蒼を呼び出した、セレーネの第一王女・クラウディア姫の一言だった。
◆◇◆
「……あなた、私の命の恩人ですね」
夜。姫の私室で、クラウディアは真っ直ぐに蒼を見つめていた。
「命を救われたのに、何もお礼ができないなんて、王族の名折れです」
「いや、任務だし? そんな大層なことじゃ……」
「……では」
クラウディアが、突然、蒼の手を取った。
「私の“心”を、受け取っていただけますか?」
「………………えっ」
ピタリと時間が止まる。
「……まって、まって!どういう意味それ!?」
「恋です、蒼様。あなたに恋をしました。性別など、関係ありません」
「いやいやいやいや!あるでしょ!いろいろ!色々!!」
その頃、扉の陰では――
「……聞き捨てならないわね」
紅が、ピキリと額に青筋を立てていた。
楓(そっとメモを取りながら):
「これは……蒼さんの、モテ期到来……!」
影(フードの猫耳がぴくり):
「警戒。セレーネ王国、姫属性、告白爆弾搭載型……要注意」
◆◇◆
結局その夜、紅に部屋まで引きずられて帰ることとなった蒼。
廊下で、ぽつりと紅が呟く。
「……もしあんたが、そっちの姫さまのところに行っちゃったら、私はどうすればいいのよ」
「え……」
「何でもないっ!」
(紅……?)
蒼の胸が、妙にドキドキした。
でも、その奥底で――
(“烈火”としての記憶……あの剣士だった日々が、少しずつ、戻ってきてる……?)
過去と現在が交差しはじめる中で、
蒼の“心”もまた、揺れ動き始めていた。




