第27話「焚火の記憶と、未遂のキス」
忍び寄る影、灰焔の刺客襲来
任務先、エルネシア姫のいる王国の夜。
王城の庭園にて、蒼は姫の護衛として巡回していた。
空気が、張り詰める。気配が揺れる。
「……来たか」
木の影から現れたのは、黒装束の刺客。
ただの盗賊ではない。蒼の“記憶”が訴えてくる。
(こいつ……異世界の“灰焔”の紋だ。まさか……)
「“烈火”……いや、“焚火”か。“魂の融合者”がこの時代に現れるとはな」
刺客の口から、ありえない名が発せられる。
記憶の奥で疼く、痛みと熱――“あの炎”の記憶。
蒼の表情が強張る。
「お前……俺のことを知ってるのか?」
「知っているとも。貴様は我らが“鍵”。そのスキル、《譲渡》も、《不死》も、《コピー》も──すべて我らの計画には必要だ」
地を這うような術式が展開され、蒼の足元を絡め取るように影が伸びる。
「姫には、指一本触れさせない!」
蒼は即座に前転で回避、そのまま鞭を召喚。
《スキル発動:鞭の進化【刺薔薇の鞭】》
しゅぱんっ! しゅるるるっ!
黒き刺のついた鞭が、敵の術式を断ち切るように風を裂く。
しかし、鞭は蒼の意思に反し――
「痛っ!? って、自分に巻きつくなっての!!」
「ふ……未熟だな。だが――やはり“その力”は本物か」
黒装束の男は姿を闇に消し、再び現れる。
無音の跳躍、瞬歩のような動き。
蒼はとっさに紅の双剣スタイルをコピーする。
《スキル発動:武技コピー【双剣・紅式】》
キンッ! カンッ!
空中で交差する刃。だが蒼の動きに迷いが出る。
(なにかが、邪魔をしている……この、記憶……?)
激しい打ち合いの中、敵は一度距離を取る。
「貴様の中に眠る“焚火”と“烈火”……その魂が完全に目覚めるとき、我らは再び現れる」
そう言い残し、闇に溶けるように姿を消した。
「くっ……」
蒼は膝をつき、額を押さえる。
“焚火”と“烈火”――二つの魂が、また揺れ始める。
「蒼っ!! 無事だった!?」
駆けつけた紅と楓が駆け寄る。
「……敵は、もう去った。でも……なにかが、始まった気がする」
静寂の夜。
任務先の王城にある、姫の私室。
警護という名目で、蒼は姫エルネシアと二人きりだった。
「今夜は……私と、少しだけ話してくださる?」
淡いピンクのネグリジェ。
エルネシアはそのまま蒼の袖を引いた。
(待て待て待て待て……これ、ヤバくねぇか!?)
蒼の思考は混乱の渦。
(っていうか、俺、今女子だぞ!?でも中身は男だぞ!?……いや、でも姫さま超かわいいな!?)
ぐるぐる思考の中、気づけば至近距離。
エルネシアの手が、そっと蒼の胸元に伸び――
「あなたの心臓、すごく早く打ってる……私と同じ」
「……っ!!」
何かが弾ける。
蒼は足を滑らせにエルネシアと転がるようにベッドへとた折れ込む
だが、次の瞬間――
唇が、触れた。
(うそだろぉぉぉおおおおおお!?)
絶妙な角度、まさかの体勢。
まるで、運命が仕組んだかのようなキス。
「……ん、っ」
数秒後。
姫の顔は真っ赤に染まり、ぽかーんと口を開けていた。
蒼は必死に跳ね起きる。
「い、今のは事故だ!故意じゃない!いやほんとにごめ――」
その時。
蒼の胸が、ぐにゅんと熱くなる。
《スキル発動:譲渡スキル【愛の付与】──“胸のサイズ、エルネシアへ転送”》
「うわああああああ!?またかよぉぉぉぉ!!!」
エルネシアのネグリジェが、ぎゅぅぅぅうんと張り詰める。
「きゃ……!? な、な、なに……これっ……!?」
紅が飛び込んでくる。
「蒼!? 何やってんのよ、姫さまと……って、胸!? 姫さまが、爆乳に!?」
楓が続いて入ってくる。
「わわっ!? 蒼ちゃん、これまた“譲渡しちゃった”感じ~!?」
影(ZERO)も無言で登場。
眼帯の奥の金の目がピクピク動いていた。
「……“愛の付与”……観測記録、保存済」
(もう……嫌だ、このわがままボディぃぃぃぃぃぃ!!!)
蒼の心の叫びは、夜の王城にこだました。
---
しかし。
その裏で、暗闇に佇むフードの男が呟く。
「ついに“譲渡スキル”が……発現したか。ならば、第二段階へ移行する」
その背に、“灰焔”の印章が、淡く浮かび上がる――




