第25話「護衛任務と、微睡(まどろ)む焔の記憶」
「任務内容は、他国から来賓中の姫君の護衛だ」
そう告げたのは、蒼たちの“なんちゃって”師匠――あの性別不明・年齢不詳・存在すら曖昧な変態…もとい、天才指南役である。
「……姫?また面倒なパターン?」
蒼は腰に手を当て、思わずため息をついた。
(このナイスバディで護衛とか、マジで向いてないから!!走るたび揺れて重いし、視線が刺さるし、紅とか影が冷たい目で見てくるし……!)
そんな蒼の心の叫びをよそに、姫は颯爽と現れた。
その名は――エルネシア・シェルフィード王女。
銀髪に琥珀の瞳を持ち、異国的なドレスと気品を纏った美少女。
「あなたが……蒼様ね?よろしくお願いするわ。護衛と言うより、どうか……私の側にいて」
「ん? え? あっ……はい、え、えぇ……!?」
一瞬で彼女の瞳に吸い込まれるような感覚――
蒼は戸惑いながらも、エルネシアの手を取り、ふわっと柔らかな手触りにドキリとした。
(ま、また女の子に惚れられた!?俺、元男だからな!?)
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護衛任務は意外にも波乱なく進んでいた……が。
夜、エルネシアと蒼が密かに行動していた最中――
突如、黒装束の一団が、影から現れる。
「……来たか、“灰焔”の残党か」
師匠が呟く。
その名に、蒼の背筋が凍る。
(“灰焔”……俺が烈火だった頃、追われていた組織……!)
視界が揺れる。
頭の中で、誰かが泣いている。
赤く燃える村。
仲間たちの叫び。
そして……もう一つの声。
(――たきび……?)
少女の声。
自分がもう一つの魂として持つ、“焚火”の記憶。
なぜか、彼女もまた“灰焔”によって命を落としたのではないか――?
「蒼、下がって!!」
紅の叫びで、蒼は正気に戻る。
眼前には、黒き仮面をつけた男が一人。
「まさか……貴様、生きていたとはな、“烈火”」
男の声は、確かにかつての“あの世界”の言葉だった。
「俺は……蒼だ」
蒼はそう言い放つ。
「でも、烈火も焚火も、ここにいる。俺は“全部”俺だ!!」
その声に、彼女(彼)の鞭が赤く輝いた。
怒りと混乱と……“守りたい”想いを宿して。




