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本編再開『異世界忍法帖 ―くノ一蒼―』 第24章:忍の掟と、揺れる心
日が落ち、忍の里に夜が訪れる。
蒼は修行の合間に、一人、裏山の岩場へと足を運んでいた。冷たい風が髪を揺らし、夜の静けさの中で彼女は深く息を吐く。
かつて自分は“パルクールのプロ”だった。
異世界では“烈火”と呼ばれ、戦火を駆ける戦士だった。
けれど今は、女の身体を持つ“蒼”として――。
「……この身体にも、ようやく慣れてきた、けど」
蒼は胸元に手を当てる。ため息のような言葉が漏れる。
「心が、まだ…揺れる」
ふと、風の音に混じって足音がした。振り返ると、紅が立っていた。
「……また来てたんだ。ここ、お気に入りだよね」
「紅。……うん、ここ、落ち着くんだ」
夜の月明かりの中、二人はしばし沈黙する。
そして、紅がぽつりと呟く。
「蒼ってさ、強いよね。いろんなもの背負ってるのに、ちゃんと立ってる」
「そんなことないよ。むしろ、いつもギリギリだ。……でも、支えてくれる人がいるから、なんとか」
蒼は紅を見つめて、微笑む。
紅の頬が、少しだけ赤く染まった。
「……さ。明日からの任務、準備しよ。次は本格的な外任務。あたしたち――くノ一として、本物の戦いが始まるんだから」
「うん。……紅、ありがとう」
月は静かに、ふたりを照らしていた。




