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『異世界忍法帖』番外編15 「ばれた想いと修羅場の朝食」



 


朝――。

野営地には、さわやかな風と鳥のさえずり。

……のはずが。


「おっはよー! ふぁ〜、なんか蒼と紅、昨夜くっついてなかった?」


楓のふわふわした声が、火にかけた鍋の湯気の中に響いた。


「……昨夜、寝返り打ったら、隣に紅の腕が巻きついてた。あれは夢じゃない」


影(ZERO)が無感情に報告する。


「な、なななな……っ!?!?」


蒼はご飯茶碗を盛大にひっくり返しながら、顔を真っ赤にする。


「ち、ちが、これは……その、ほら! 急接近とかじゃなくて、たまたまその、近くで、えっと――!」


「おおぉ……これはこれは、修羅場の匂いですねぇ〜?」


楓はにこにこしながらお味噌汁をよそっている。

しかも、その目はしっかりと“観察モード”のメガネ機能で録画中だ。


「紅、説明しなさい」


影の声は静かだが、どこか“刃”がこもっている。

その背後では、大剣の柄がゆっくりと浮かび上がっていた。


「べ、別に説明するようなことじゃないし!」


紅はふん、と顔をそむけた。


「昨日、言ったんだよ……! 蒼のこと、好きって!」


「うぉおおい!?」


「で、蒼も、好きって言ってくれた!」


「うわああああぁぁ!? 言うなああぁぁぁぁ!!」


蒼は火の周りをぐるぐる走りながら頭を抱える。


その様子を見て、楓はほわんと微笑む。


「お似合いですよぉ……。でも、バレたからには、覚悟ですね、蒼ちゃん?」


影はじりじりと近づいてくる。


「私と蒼の絆も、深かったはずなのに……寝取られたのかしら……?」


「いやいやいやいやいや!? ちょっと待って!? そういう方向じゃないから! 勘違いしないで!?」


蒼の声は、焦りと恥ずかしさと困惑で上ずっていた。


 


それでも――。


不思議と、胸の奥にあたたかいものが残っていた。

仲間たちに囲まれて、騒がしくも賑やかな朝食。

彼女たちに“想い”を知られたことで、少しだけ肩の荷が下りたような気がした。


そして――蒼は気づく。


この世界で、自分は“誰かに愛されている”。

そして、自分もまた“誰かを想っている”。


たとえ、それがドタバタで、エロくて、修羅場でも。

その感情が、確かに「今の蒼」を形作っているのだと。


 


――朝食の湯気の中で、蒼はこっそり笑った。


 






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