番外編⑪ 『師匠と蒼、まさかの夜会話。布団はひとつ!?』
任務からの帰り道、一行は小さな山中の隠れ宿に立ち寄った。
だが――
なぜか部屋には布団が一組しかなかった。
蒼「…………なあ」
師匠「うむ?」
蒼「なんで、部屋が一つで、布団も一つなんだ」
師匠「予約しておいたが、手違いらしい。気にするな」
蒼「いや気になるわ!ていうか、あんた性別どっちだっけ?」
師匠「それはお前の目で確かめてみるがいい」
蒼「そういうのいらねぇんだよ!!」
だが時刻はすでに夜も更け、他に空き部屋はなく――
しかたなく、布団に二人、向かい合って寝る形に。
蒼「……寝返り打つなよ」
師匠「そもそもわしは寝ない」
蒼「じゃあ見つめるなよ!!」
――しばし沈黙。
ふと、蒼はぽつりと呟いた。
蒼「なあ、俺……いや、“私”って、本当に転生してよかったんかな……」
師匠は黙って聞いていたが、やがて、静かに答える。
師匠「お前が迷っているうちは、正解などない。だが……」
蒼「だが?」
師匠「“今のお前”にしか救えないものがある。身体が変わろうが、魂が烈火であれ蒼であれ――」
蒼「……“私”は、“私”か」
師匠「そうだ。そしてこの体でしか得られない喜びや苦労もあるだろう」
蒼「……喜びってなによ」
師匠「……ふふ、お前。最近、あの紅という娘と仲がよさそうだな?」
蒼「へっ!?な、なに見て――」
師匠「……背中、揉まれていたな。なかなか技術があったようだが?」
蒼「やめろおおおおおおおおおっ!!」
師匠の顔は、性別も年齢も読めない――
だが、その微笑みは確かにあたたかかった。
やがて、蒼のまぶたが重くなり始める。
蒼「なあ、師匠……アンタ、なんなんだよ。俺の、転生のこと……全部知ってるみたいにさ……」
師匠「……それはまた、いつか話そう」
その答えが落ちるより早く、蒼は眠りへと落ちていった。
静かに、静かに――
布団の上には、揺れる蒼の吐息と、師匠の柔らかなまなざしが残っていた。
――そして、布団の下でなぜか尾っぽのようなものがちらりと揺れたことを、
誰も気づいていなかった。




