番外編② 「蒼、恋を知る?くノ一・初めてのトキメキ相談会」
任務帰り、夕暮れの道。
蒼はひとり、ぼーっと空を見上げていた。
「……なんでだろ。最近、胸がざわざわする……」
昼間、救出任務中に助けてくれた男性――
任務協力で同行した、隣国の若き隊長《凛牙》のことを思い出していた。
彼が髪をかきあげる仕草。
戦場で真剣に部下を庇ったその背中。
任務後に、さりげなく差し出された水のボトル。
「べ、別に……カッコよかったとか……ないし……っ」
顔を真っ赤にしながら、蒼はぷいっとそっぽを向く。
その様子を、屋根の上からこっそり見ていたのは――紅、楓、そして影《ZERO》。
「ふふ……恋ね」
「まさか蒼が……恋愛脳に!」
「……解析不能(←棒読み)」
***
夜・相談会開幕!
蒼の部屋に、なぜか全員集合していた。
「な、なんで皆、私の部屋に!? 寝巻きだしっ、ブラも外してたしっ!?」
「蒼。これはもう……恋愛特別緊急対策会議よ!」
「別に私は……そんな、惚れたとか……!」
「照れてるー!」
「……証拠。耳、赤い(ぴくぴく)」
楓が持ってきた“くノ一恋愛バイブル(自作)”が開かれ、
影が恋愛シミュレーションアプリを起動(なぜか持ってる)し、
紅が得意げに言い放つ。
「で? どこが好きなの、その男」
「す、好きじゃないし!? ただ、なんかこう……胸がモヤってして……あとちょっと……ドキドキして……」
「ふむふむ。これは“恋の初期症状”ですね!」
「……恋、判定95%。主症状:顔を思い出してニヤける」
「に、にやけてなんかないもんっ!」
「嘘。5回くらい顔赤くしてた。録画済み」
「え、嘘でしょ!?」
***
突然のアクション!?
「――じゃあ試してみようか」
紅が不敵に笑う。
「“模擬・告白シチュエーション”!」
「なにそれぇぇえええっ!?」
蒼の前に凛牙風のマネキンが出され(楓特製)、
「……俺はお前のことが、気になってた」
「っ……な、なにその低音ボイス!」
「返事は……?」
「や、やだっ……む、胸のあたりが……ぎゅんって……!!」
「はい、アウトー!」
「……完全に惚れてる」
「照れて顔埋めるその仕草、もはや恋乙女!」
***
夜も更けて――
みんなが帰ったあと、ひとりベッドで寝転がる蒼。
「……バカじゃないの、私……恋とか、似合わないくせに……」
でも――
思い浮かぶのは、あの凛牙の優しい目。
「……次、会えるかな」
ぽつりと呟いて、布団をぎゅっと抱きしめる。
胸の奥、どくん、と高鳴る音。
それは、かつて知らなかった“蒼”の感情。
もしかしたら――この身体になった理由。
それは、「誰かを好きになるため」だったのかもしれない。
そして、夜は静かに更けていった。




