表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/145

第21話:「影と光の境界 ―ZEROの過去―」



 


夜の稽古場に、影が差していた。

誰も近づかない訓練棟の奥。そこにひとり、黙々と木刀を振るう少女の姿がある。


影――ZERO。


無言のまま、まるで“自分自身”を斬るかのような鋭さで、刀を振り続けていた。


 


「……また、一人でやってるの?」


声をかけたのは、蒼だった。


 


「……問題ない」


返ってきたのは、いつも通りの棒読み。でも、その言葉の端に、どこか迷いのような、かすかな“揺れ”があった。


 


蒼は静かに歩み寄る。


「ねぇ、影――ZERO。ずっと気になってた。君の目……その眼帯の下には、何があるの?」


 


沈黙。


だが、やがて――ZEROはゆっくりと右手を伸ばし、眼帯を外す。


 


現れたのは、黄金の瞳。


異様な光を宿し、まるで“別の世界”を見通すような、深淵の色だった。


 


「これは、“神眼”。すべてを視る目――過去、未来、魂のかたち……そして、“死”の気配も」


 


「死の……気配?」


 


ZEROは木刀を下ろし、ぽつりと語りはじめた。


「……私は、実験施設の産物。かつて、人ならざるものとして作られた、“影”の存在だった」


「……え?」


 


「ある国の軍が、未来視を可能とする“完全予知眼”の研究をしていた。私はその試作体。“失敗作”だったけどね」


 


静かな口調の中に、氷のような痛みがあった。


「逃げ出したあと、この里に拾われた。“影”としての名を得て。私は、誰にも気づかれないように生きてきた。……でも、蒼、君だけは……なぜか、見えるように感じたんだ」


 


蒼は目を見開く。


「私が……?」


「君の中には、影と同じくらい深い“闇”がある。そして、同時に……抗う“光”もある。そんな人間は、初めてだった」


 


そのとき、風が吹いた。

訓練場の高窓から差し込む月光が、ZEROの金の眼に反射して輝く。


 


「なあ、影。私はさ……女になってから、ちょっと人生変わったけど。悪くないって思ってる。君も、これからだよ」


 


「……変わってないように見えて、変わっていく」


「それでいいのさ。だって、私たちは、**“KUNOICHI”**だからね」


 


ふと、ZEROの口元が――かすかに、笑った。


たった数ミリの変化。だがそれは、彼女にとっては世界が変わるほどの“前進”だった。


 


その夜、蒼とZEROは背中を預け合って、しばらく言葉を交わさぬまま、ただ静かに月を見上げていた。


 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ