第20話:「淫術!? 禁断の任務は女体の危機!?」
――数日後。
蒼たちは、師匠に呼び出されていた。いつものように、どこか妖しげな雰囲気で、着物の袖からは湯気のような香が漂っていた。
「今宵、おぬしらに頼みたい任務がある」
「また妙な前置きから始まったなぁ……」蒼が呟くと、師匠はにっこり微笑んだ。
「“夜伽屋敷”という名の遊郭街に、不穏な気配がある。淫術使い――“妖艶の朱蓮”という女が現れた」
「淫術……!?それって……その、やらしい……やつ?」
楓が耳まで真っ赤になりながらそわそわ。
紅は剣を構えるように拳を握る。
「遊郭ってことは……男は入れない場所、だよね」
「当然だ。ゆえに、潜入できるのは――女子のみ」
師匠は、ニヤリと唇を歪めた。
「この任務、君らくノ一部隊の出番というわけじゃ」
◆
夜――
妖しく灯る提灯が揺れる“夜伽屋敷”。
蒼たちは、くノ一の姿を少し色っぽく“加工”された衣装に着替えさせられていた。
「……な、なんで、こんな服なの……!?」
蒼の姿は、肩と太ももを大胆に出した、透ける黒布の装束。
谷間も、腰も、どう考えても任務に支障が出そうなほど“過剰装備”だ。
「これは正装らしいぞ。相手に気を許させるための忍装束……らしい」
ZEROがボソリと呟くが、彼女のゴスロリ艶装束も、なぜか更に布面積が少なくなっていた。
「ぜ、絶対これ、おかしいでしょぉぉ……!///」
「蒼……その谷間の紐、ずれてるよ」
楓が嬉しそうに直そうとする。
「触らないでえええええ!!」
◆
夜伽屋敷の中――
蒼たちは遊女になりすまし、“妖艶の朱蓮”に接触を試みていた。
すると、客の間から濃密な香が漂う。
「ようこそ……愛しい娘たち。私の“花園”へ」
現れたのは、背の高い美女。
真紅の着物に艶やかな瞳、流し目一つで場の空気を支配する。
「……あなたが、朱蓮……?」
「ええ。今宵は、どの子を“咲かせ”てみようかしら……?」
その瞳が、まっすぐ蒼を見つめた瞬間――
全身にぞくりと電流のような刺激が走る。
(な、なにこれ……身体が……熱い……!?)
淫術――それは視線と香気で相手の感覚を狂わせ、理性を奪う妖術。
紅が短剣を取り出そうとするが、指が震え動かない。
「ちょ……紅……楓……ZEROも……っ!?」
仲間たちが次々に崩れ落ちていく。
艶やかで、だが確実に“意識”を溶かすような術。
だが――
「……私には効かない」
そう呟いたのは、蒼だった。
(私の身体は、女……でも、魂の中に“男”がいる!)
(だから、感覚が“二重”なんだ――)
朱蓮が目を見開く。
「……あなた、何者?」
「ただの……転生チートKUNOICHIよ!!」
蒼は一気に駆け出した。
手にしたのは、変化し始める“鞭”。
革の鞭が、鎖へ、薔薇の茨のような棘へ――
「忍法――紅蓮鞭・咲裂の型!」
茨が舞い、朱蓮の香気を切り裂く。
「見せてあげる……あんたの妖艶さ、上書きしてやる!!」
◆
その夜、朱蓮の花園は崩れ去った。
彼女は気を失い、淫術の禁書は封印された。
帰り道――
「……蒼ちゃん、すごかったね……♡」
「う、うん……でも、なんで最後、私だけ服破けてたの……!?」
「それは……あれよ、任務の代償?的な」
「どんな代償ぉぉぉ!?」
そして――
師匠は、どこか遠くを見ながら呟く。
「やはり、“蒼の魂”は、あの時の……いや、まだ話す時ではないの」




