第19話:「忍の里にて、揺れる心と胸と」
忍の里。
朝の修練場では、今日も忍びたちが汗を流し、技を磨いていた。
だが――その中に混じって、ひときわ目立つ“ボディ”があった。
「はっ、せいっ……ぐっ!」
蒼が飛び跳ねるたびに、訓練着の胸元が“主張”しすぎていて、周囲の視線が釘付けだ。
(ちょ……おかしいでしょ! なんでこの服、支えがないの!?)
跳ねる、揺れる、弾む、ぶつかる。
ついでに仲間の紅や楓にもぶつかって、ドタバタと巻き込まれていく。
「っつ、蒼! 胸、当たってる当たってるぅ!」
「わ、わざとじゃないからっ!? 背中押されたのー!」
「どこが背中だー! 顔面に押しつぶされたわぁ!」
紅の悲鳴が響く。
その後ろで、零が棒読みで一言。
「……あれ、事故ではなく、兵器」
楓が眼鏡をピカリと光らせながら、測定値を口にする。
「うわあ、振動の周期が、昨日より3%も上がってる……!蒼ちゃんの柔軟性、進化してるよぉ……!」
「そこ進化しなくていいからーっ!」
◆
そんな騒動の後、蒼は道場裏でひとり水を飲んでいた。
汗がにじむ肌、上気した頬。
そこに、ひとつの影が近づく。
「……疲れたか?」
声をかけてきたのは、別部隊の若き忍――影龍だ。
冷静沈着で、どこか影のある青年。
「あ、うん……でも、まだ大丈夫……って、うわっ」
蒼が立ち上がろうとして、足を滑らせる。
咄嗟に彼が受け止めた――柔らかい感触とともに。
「……すまない。変なところ、触って……」
「い、いえ、あの……こ、こっちこそ……っ///」
互いに赤面。
微妙にずれた手の位置が、余計に気まずい。
(というか!なんでよりによって、こんなにド直球な展開に!?)
その場の空気がふわりと甘くなる。
だが――!
「蒼ぉぉぉっ!!何ムフムフしてんのよぉぉぉっ!!」
紅が乱入、短剣を振りかざしながら蒼の首根っこを引っ張った!
「違うのぉ!いや、違わなくはないけど誤解なのぉー!!」
「誤解じゃなかったらぶっ飛ばすぅぅ!!」
◆
夜、風呂場。
全員揃っての入浴タイム。
「……ふぅ~、やっぱお湯って最高~!」
紅がさっぱりした表情で肩まで湯船に沈む。
「蒼ちゃんの背中、流してあげるね♪」
楓がマッサージと称して、ムニムニ揉んでくる。
「ちょ、ちょっと楓っ!揉みすぎっ!そこ背中じゃなくてっ……!」
「うっかり♡」と悪戯っぽく笑う楓。
その横では、ZEROが無言で入浴中。
相変わらずゴスロリ姿のままだが、湯気の中でうっすら透け――
「ZERO!?服のまま入るのやめて!しかもそれ透けるってば!!」
「これは“影の衣”……濡れて透けるのも任務」
「任務違うでしょぉーっ!!」
◆
夜空の下、軒先で涼む蒼は、ふと月を見上げる。
(……転生、魂、烈火。自分って……いったい何なんだろう)
まだわからないことばかり。
でも、今は確かに“ここ”で、生きてる。
そこにそっと現れる、影龍。
「おまえは、おまえのままでいい。
“何者”かなんて、あとで答えが出るさ」
「……うん」
風がふわりと蒼の髪を揺らした。
その隣で、紅たちが扉の隙間からこっそり覗いていることには、まだ気づいていない――。




