表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/145

第18話:「影より来たりし者」



 


祠の封印が砕け、空気が変わった。

山を包んでいた霧がざわめき、渦を巻くように流れていく。


「……風が、逆流してる?」


紅が構える双剣が微かに震えた。


 


そのとき――

祠の奥、まるで闇そのもののような“穴”が開いた。


 


「……来たか」


ZEROが呟いた。


 


そこから現れたのは、全身を黒い衣で覆った異形の存在。

長く伸びる髪、左右で色の違う瞳、そして……身体の周囲に漂う影の残滓。


「“影使い”……生きてる、いや、封印されていた?」


楓が呟く。


 


その影の人物は、蒼を見て、確かに“笑った”。


 


「……ようやく“器”が目覚めたか。

おまえか、“烈火の魂”を引き継いだのは」


「知ってるの!? 私が“烈火”だったって」


「いや、“かつての烈火”ではない。“烈火の業”――

それが今の、おまえ“蒼”に宿っているだけのこと」


 


影の男は、静かに手を差し出す。


「この世界の歪み、転生の連鎖、魂の循環……

すべては、“神々の余計な遊戯”のせいだ。

だが、おまえはその中で“例外”だ。

二つの魂が一つの器に宿りながら、砕けなかった」


 


「どういうこと……?」


「魂を無理やり繋ぎ合わされた者の末路は、普通――破壊だ。

だが、おまえの中の“焚火”と“烈火”は溶け合い、“蒼”という存在になった。

それは神々すら予測できなかった、“変異”だ」


 


ZEROが蒼の前に立つ。


「……用件は何?」


「単純だ。“選ばれし器”に、選択肢を与えに来た。

その魂を我ら影の王として迎えるか――

それとも、己の意志で世界の敵となるか?」


 


「選ばれし器って……私がそんな……」


蒼は拳を握る。


「私がここにいるのは、誰かに選ばれたからじゃない。

私自身が、ここにいたいって思ったからだよ!」


 


その声と共に、蒼の鞭が唸った。

火花と共に伸びた“意志の鞭”は、影の足元を裂く。


 


「ふむ……やはり、“烈火”らしい。ならば試そう。

次に会うとき、おまえがまだ“自分”であることを祈ろう」


 


影の存在は霧と共に溶けるように消えていった。


 


残されたのは、微かに揺れる空気と――

“自分が何者か”という、新たな問い。


 


「……蒼、あんた、いったいどこまで巻き込まれてるのよ」


紅が息を吐きながら苦笑する。


 


「わかんない。でも……わからないなら、知ってやる。

焚火としても、烈火としても、そして――“蒼”としても!」


 


蒼は笑った。


その瞳の奥に宿るのは、確かな覚悟。


 


今、“異世界忍法帖”は新たな章へと入る。


 









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ