第79話『記憶なき日常と、ほんとうの夢』・終幕
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第79話『記憶なき日常と、ほんとうの夢』・終幕
平穏な日常。
だがその“静けさ”の中に、誰にも気づかれぬほど微かな“軋み”が、世界に混じり始めていた。
ZEROは、人気のない森の中で足を止める。
漆黒のフードを風が揺らし、彼女のオッドアイが、遠くに広がる空を捉えていた。
「……この空の色。変わり始めている」
同じころ、楓の眼鏡に、わずかな“異常信号”が表示される。
通常では検知できぬはずの“記録反応”。
「……消えたはずの記録が、再構築されている……?」
一方、蒼と紅は、夕暮れの縁側で肩を並べていた。
何も言葉を交わさなくても、ただそこにいるだけで満たされる。
そんな時間だった。
だが――蒼の瞳がふと、遠くの空を見つめたまま呟く。
「……また、何かが始まる気がする」
紅が静かに手を握る。
「何があっても、大丈夫。私たちはもう、独りじゃないから」
そして――夜空に、ふたつの星が流れる。
ひとつは、深い蒼。
ひとつは、揺れる紅。
その光が、ふたたび世界の“記録”を照らすのは、そう遠くない未来のこと――
──終──
次章予告?
「記録の番人が眠りから覚めるとき、
忘れられた者たちの記録が、もう一度動き出す」
「次なる舞台は、“最初の記録地”――神も知らぬ記憶のはじまり」