第72話『刻まれた誓いと、運命の選択』
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月明かりの照らす古代遺跡。その中心にそびえ立つ石碑には、かつての世界で語られた禁忌の文字が浮かび上がっていた。
「ここが……“記憶の始原地”」
ZEROが呟いたその声は、どこか震えていた。
右目の奥で、【神目】が脈動している。
「ここに来れば、思い出せるって……あの人はそう言ってた」
「“あの人”って誰?」
楓がそっと問いかけると、ZEROは黙って首を振るだけだった。
その時――
遺跡の中央、石碑が光を放つ。
蒼と紅が手を繋いだ瞬間、光は二人を包み、そして──時の幻影が流れ込んできた。
◆ ◆ ◆
【時の幻影:遥か昔】
そこには、まだ“蒼”でも“烈火”でもなかった、名もなき一人の戦士がいた。
傍らには、金髪の巫女と、漆黒の影の少女。そして紅の瞳をした護衛剣士。
「この3人……どこかで……」
蒼は気付く。
それは、自分たちの“最初の輪廻”――始まりの転生だったのだ。
そこでは、確かに彼女たち全員がいた。だがそれぞれの名も、姿も、今とは違っていた。
「この記憶が、刻まれていた……“棺”の中に」
◆ ◆ ◆
光が収まり、蒼たちは現実へと引き戻された。
「思い出した……私たち、出会ってたんだ。ずっと前から」
蒼の目に涙が滲む。それは懐かしさと、切なさの混じる感情。
紅はその頬をそっと撫で、微笑む。
「だから言ったでしょ。私は何度生まれ変わっても、蒼を見つけるって」
ZEROも小さく頷いた。
「私も……そのために、存在している。あなたたちの記録を守るために」
楓が持つ打出の小槌も、静かに光を放つ。
まるで、失われた記憶を祝福するかのように。
だがその時――遺跡の空間が歪んだ。
「“記録の修正者”だわ!」
楓の眼鏡が警告を発する。
黒い装束に身を包んだ者たちが次々と転移してくる。
「彼らは、“記録の矛盾”を消去する存在……! つまり私たちが、その矛盾なんだ」
紅が剣を構え、蒼の前に立つ。
「でも、今の蒼ならわかってるはず。私は、守られるだけじゃ嫌なの!」
蒼は頷き、鞭を手にした。
アーマーが展開し、その身体を包む。
「行こう、紅。記憶の先にある未来を、私たちの手で掴むんだ!」
ZEROも片目を光らせ、影の刃を展開する。
「始めよう。“記録”の上書きを」
戦いの火蓋が、いま切られる。