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第71話「記録抗争 ―蒼と紅と、名を持たぬ創造



 


天地が反転したかのような空間で、蒼たちと“記録の創造主”との戦いは続いていた。


空間は概念であり、記録であり、創造された“物語の外”である。


この場での戦いは、“存在の説得力”そのものを競うもの。


つまり――


「気合と愛が、現実に勝つってことね!」


楓の叫びが、重苦しい空気を突き破る。


 


「その通り……なら、愛で押し切るわよ!」


紅の双剣が、雷光をまとって飛翔した。


だが、創造主は羽ペンを一振り。


「“雷刃・雷紋斬”――削除」


 


その一言で、紅の攻撃は空に溶けた。


「な……っ!? スキルが、無効に……!?」


 


「記録とは、定義だ。定義なきものは、存在せず。存在せざるものは、消える」


創造主の声が響くたびに、世界が塗り替えられていく。


 


しかし、その時――


蒼の身体を覆う“アーマー鞭”が強く輝いた。


《スキル共鳴:愛の記録 ―“存在強化:紅との絆”》発動!


 


「定義なんて、こっちで決めさせてもらうわっ!」


蒼が鞭を振るい、宙を裂くように攻撃する。


 


同時に、ZEROが呟いた。


「私の存在は、影。その影が照らす光がある限り、私は消えない」


眼帯が外れた時、金色の神目が記録の空間を読み替える。


 


「記録の棺、開封します」


ZEROが囁くと同時に、蒼の脳裏に一閃の“過去”が差し込む。


 


――火の中、笑う自分。

――“烈火”と呼ばれた名。

――何度も繰り返された転生。


「蒼、あなたは……記録を書いてきた側でもあるのね?」


紅の問いに、蒼は目を見開く。


 


「違う……けど、近い。私はたぶん、“記録を書き換えられた存在”だったんだ!」


 


その瞬間、創造主が戸惑う。


「君が記録の外部から来た……転生者であることは理解していた。だが、書き換えられていたとは……?」


 


蒼は強く叫ぶ。


「私は、誰かの物語じゃない! 私の物語は、私と、仲間と、そして――紅が作るんだ!」


 


「蒼……!」


紅が手を伸ばすと、彼女の身体から光が生まれる。


 


《共鳴進化スキル:愛の譲渡・完全共鳴モード》

《新スキル覚醒:双心輪廻そうしんりんね


 


蒼と紅のスキルが、融合した。


2人の身体に光の紋章が浮かび――蒼は雷を、紅は炎を纏い、双撃を放つ!


 


「これが――私たちの、愛と記憶の物語だぁっ!!」


 


創造主の羽ペンが砕け、白紙の書板が裂けた。


「……私にも、かつて名が、あったのかもしれない……」


 


彼は静かに、塵のように崩れ、記録の空間は元に戻った。


 


ZEROが目を閉じる。


「……“記録”に“愛”が勝った。……らしい」


楓が涙目で叫ぶ。


「よかったああ! もうっ、蒼も紅も……愛が爆発しすぎなんだからっ!」


 


蒼は、そっと紅の手を握る。


「ありがとう。君がいなかったら、私は……また、“誰かの物語”に戻ってた」


紅は笑う。


「何度でも言うわよ。現世でも、来世でも、私が見つけるって」


 


2人の唇が、そっと重なる。


優しさと、熱さと、確かな“存在の記録”を確かめるように。


 


そして、ZEROは小さく呟いた。


「……次に記録を開くのは、あなたたちの“未来”の番よ」




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