第68話「神の記録と、継がれし誓い」
記録の棺が開かれ、蒼の中に残された“烈火”の記憶は徐々に輪郭を帯びていく。
そして、ZEROが静かに口を開いた。
「私の記憶も、棺に繋がっていたようだ……蒼、私たちは前にも出会っていたかもしれない」
「え?」
ZEROの瞳が静かに金色へと染まる。
その眼に浮かぶのは、かつて“神の任”と呼ばれた使命を帯びた、謎の組織――《天記》の記録。
「あなたが“烈火”だった時代、私は“観測者”だった。
神の記録を守る存在として、あなたの最期を……見届けた」
蒼の心に、かすかに痛みが走る。
「じゃあ……ZERO、俺のこと……いや、“私”のこと、ずっと……」
「……うん。忘れたくても、忘れられなかった」
その瞬間、遠くから爆音が響く。
地の奥深く、記録の棺が再び脈動し、そこから瘴気のような力があふれ出す。
「これは……記録の棺が、第二の“扉”を開こうとしている……?」
楓が眼鏡を調整し、思わず声を漏らす。
「どうやら、ただの“記憶の再生装置”じゃないみたい……もっと深く、“存在そのもの”を書き換える力を秘めてる!」
「ってことは……このままじゃ、また誰かが記録を書き換えられるかもってことかよ……!」
蒼は鞭を手に立ち上がる。
「なら、ぶっ壊すしかないよな。――この、“運命の編集機”なんて!」
紅がその背中に微笑みを浮かべながら、並び立つ。
「“私たち”で、書き換えよう。“蒼”の物語を――これからの未来に」
蒼はそっと紅の手を握った。
「おう、現世でも、来世でも……俺が、君を選ぶ」
その言葉に、ZEROと楓は小さく肩を震わせながら――
「また……一歩進んだようですね」「私も負けてられない……」
と、それぞれに想いを抱くのだった。
そして、一行は次なる目的地――
神殿遺跡《記録の始原地》へと向かうことになる。
そこに、真なる記録の番人が待っているとも知らずに。