表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
130/145

番外編 続:夜会と姫の本音 ――そして、過去が揺らぐ時



 


夜も更け、月明かりが離宮の庭園を静かに照らす。


蒼はなぜか一人、宮殿のバルコニーにいた。


蒼「ふぅ……やっと静かになった。皆、布団に戻った……よな?紅も……今日はやけに押しが強かったし」


蒼の頬が、ほのかに赤く染まっていた。


 


そこへ、ひらりと現れる一人の影。


「今宵の月は、よく澄んでおりますね」


 


フィリア姫だった。


蒼「姫、こんな夜更けに……危ないですよ?」


フィリア「危ないのは……貴女の方かもしれませんわ」


 


そう言って、姫は蒼のすぐ横に立ち、そっと腕を絡めてくる。


蒼「えっ、あ、あの、近い……」


フィリア「貴女は、“烈火”の名で呼ばれたことがあるのでしょう?」


蒼「――!」


姫の瞳はまっすぐに蒼を見つめていた。


 


フィリア「子どもの頃に、夢で見たのです。真紅の焔を纏った者が、私を救ってくれる未来の夢を。

その人の名は“烈火”――でも、私にはなぜか、あなたの姿に見えていたのです」


蒼「それって……まさか……転生前の俺(私)と……?」


 


蒼の胸に、何かがざわめいた。過去の断片――“焚火”と呼ばれていた記憶、“烈火”として名乗った記憶。


 


フィリア「でも、今の貴女は“蒼”。」


彼女は静かに蒼の手を取ると、自分の胸元に当てた。


フィリア「鼓動、聞こえますか? これは、未来の私の答え」


蒼「姫……俺……じゃない、私は――」


(紅の顔が、ふと脳裏をよぎる)


 


その時――


「姫、そこまでだ」


声が割り込んだ。


紅だった。


紅「姫、蒼は私の大切な……仲間なんです。だから……そんなふうに弄ぶのは、やめてください」


 


フィリアはふわりと微笑む。


「弄んでなどいません。私は、本気のつもりです。……でも、そうですね。貴女の想いも、私、きっと好きですわ」


 


紅「えっ……!?」


フィリア「私、女の子同士でも構いませんもの」


 


蒼・紅「なっ……!?」


 


ZERO(木陰から)「報告……姫の夜間行動、危険度:中。対象・蒼。要監視強化」


楓(木陰でこっそり)「姫ってば、あなどれませんねぇ……ふふっ」


 


 


──こうして、夜は明ける。


姫の本気の想いに、蒼の過去と現在の心が揺れ動く。


それを見守る紅、ZERO、楓――

想いが交錯する中、静かに“記録の棺”の封印が音を立て始めていた。


 






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ