表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
125/145

第64話「記録の断片との戦い」


 


黒霧の中から姿を現したのは、“過去に喰われた者たち”の影だった。


それはかつて蒼が――いや、烈火として存在した時代に出会った者たち。

救えなかった命。守れなかった約束。選び取れなかった未来。


 


「……これは……俺が、あの時……」


蒼の目が揺れる。


だが、その隣に紅が立つ。強く、まっすぐに。


「違う、これは**あなたの罪じゃない。あなたが背負ってきた“選択の記録”**よ」


 


ZEROが一歩前に出る。


「記録の断片は、心の迷いに引き寄せられる。

だからこそ、私たちが抗う意味がある」


 


断片の一体――顔を失くした青年の影が、蒼に手を伸ばす。


その姿に、蒼の脳裏に過る。


――《烈火》の時代、任務の中で見捨てるしかなかった仲間・“アシュ”。


「俺は……俺は、お前を見殺しにした……!」


 


怒りと悲しみと罪悪感が胸を刺す。


その時。


紅が、蒼の頬をパシンと叩いた。


 


「……蒼!違うわ。あなたが生きたから、私と出会えたの!」


「私も、ZEROも、楓も、あの時の“あなたの選択”があったから、ここにいるの!」


「その記録は、正しかったかじゃなく、これから何を繋ぐかで決まるのよ!」


 


蒼は――拳を握った。


その手に、炎のように光る鞭が現れる。


《記憶装備:烈火ノ記憶 ― 断罪形態》


 


「……そうだ。俺は、背負っていく。

でも、“今の俺”で、この記録に終止符を打つ!」


 


振り下ろされた鞭は、アーマーを纏い――鎖が蒼の身体を守ると同時に、衝撃を爆発させる。


 


ZEROは、敵の足元に影を這わせ、囁いた。


「記録よ、ここで終われ。次の継ぎ手は――もう決まってる」


 


影と光が交差し、不完全な断片は静かに霧へと還っていった。


 


蒼は深く息を吐いた。


その肩に、紅の手がそっと触れる。


「大丈夫。あなたの過去も、全部、私の中にあるから」


 


蒼の頬が赤く染まる。


「……ありがと。ほんとに、お前がいてくれて、よかった」


 


少しだけ、紅の顔も赤くなる。


「……あたり前でしょ。だって――」


 


その時、背後から聞こえた、くすくす笑い。


楓がニヤニヤしながら手を振る。


「ふふふ~。なんか甘い雰囲気、まんま記録しちゃったかも~♪」


 


「おい、記録って!?」


「えー!だって~、映像と音声ぜんぶ取れるんだもんっ♡ 」


 


「なぜそんなスキル持ってるんだ楓ぅぅぅっ!!!」


蒼と紅が、顔を真っ赤にしてツッコむ。


ZEROは横で静かに微笑む。


「……録画済み。いつでも再生可能」


 


「ゼロぉぉぉぉぉぉっ!?!?!?!?」


 


 


──戦いの後。

ほんの束の間の、平穏と……ドタバタ。


だが、次なる“記録”はもう動き出していた。


 



--


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ