第58話:囁く記憶と、覚醒の予兆
承知いたしました。
それで
静寂の中で、蒼の意識は深く沈んでいった。
目の前に広がるのは、焦土と化した大地。
赤黒く染まる空に、幾つもの影が交錯していた。
「……ここは、あの時の……異世界……?」
かつて“烈火”と呼ばれていた自分。
そして、傍らで倒れていた――少女・焚火。
その瞳が、ゆっくりとこちらを見つめる。
『……蒼。私たち……約束、したよね?』
「焚火……」
『“もう一度、あなたに会えるなら、どんな姿でもいい”って』
彼女の言葉と共に、蒼の胸元が温かく光を放つ。
──“譲渡スキル・共鳴進化”発動──
現世と異世界、2つの魂が深く結びついた証。
そして、焚火の囁きが、蒼の胸に残したのは**「運命を超えるための鍵」**だった。
一方その頃、紅たちは――
「蒼、大丈夫……だよね?」
「……ええ。あの子なら、必ず戻ってくる」
ZEROの声に微かな震えがあるのを、楓は聞き逃さなかった。
そして警護対象である姫――シェリア=レヴィリアは、静かに一歩前に出た。
「彼女……いえ、“彼ら”は、今も戦っている。誰かのために」
その瞳は、強く、何かを知っているような光をたたえていた。
「まさか、姫様……あなたも、“あちら側”の記憶を……?」
「……さあ、どうかしら?」
彼女は微笑んだ。意味深に。
その瞳には、蒼が“烈火”だった時に出会った“誰か”の面影が浮かぶ――
そして、意識の中から目覚める蒼。
「――行こう。全ての答えを掴むために」
愛の絆と共に進化したスキル、
仲間との絆に支えられた過去との対決が、今、始まろうとしていた。