本編第57話:任務再開 ― 潜む影と、交わる運命 ―
それでは──長く甘くドタバタな番外編の余韻を胸に、本編へと戻ります。
朝霧の中、静まり返った森の一角にて。
蒼たちは新たな潜入任務へと動き出していた。
「警護対象は、シェリア=レヴィリア姫。敵国との外交任務にて来訪中の姫君よ」
師匠が発した指令に、蒼は思わず眉を上げる。
「え、姫の護衛……? まさかまたお姫様に惚れられるとかいうパターンは――」
「蒼……その可能性、否定できないね♡」
楓の妙に含みのある声に、紅がむっとした表情で頬を膨らませた。
「また蒼だけモテモテ……あたし、監視役やるから」
「いや、私もついていく。蒼の……感情、また暴走しかけてる」
ZEROが淡々としながらも、なぜか鋭く蒼を見つめている。
そんな彼女たちを引き連れ、蒼は警護任務へ。
だがその先に待っていたのは、姫の命を狙う刺客だけではなかった。
──森の奥、蒼の意識に忍び込む“記憶の残滓”。
《焚火》
《烈火》
──そして、“転生以前の記憶”に繋がる、謎の組織の痕跡。
「この匂い……知ってる。これは……異世界の残滓……!」
鞭が鋼鎖に変じ、空を裂く。
紅の双刃が交差し、敵の影を払う。
楓が展開した新型の探知眼鏡が、目には見えぬ術式の結界を暴く。
「この結界……術式構成が、異世界の魔法と一致してる……!?」
「つまり、蒼の過去と……繋がってる?」
ZEROが呟いた刹那――
《──“烈火”が残した記憶に、干渉します──》
突如として蒼の脳裏に、焼き尽くされた異世界の大地と、
最後に交わした“少女・焚火”の微笑みがフラッシュバックする。
「まさか、あれは……!」
身体が熱を帯び、譲渡スキルが共鳴を始める。
紅が蒼を支えながら、そっと囁いた。
「大丈夫。私がいる。現世でも、来世でも。蒼が迷っても、私が見つけるから」
その言葉とともに、蒼の瞳が静かに燃える。
「――来い、過去の影ども。今の“私たち”が、ぶち壊してやる」
忍法帖は、加速する。
仲間と愛と、過去と未来を背負って。