第10話:忍魔顕現! 湯煙の中で咲く紅の刃
混浴大惨事から数時間後――
蒼たちは、湯宿の“奥の湯”で禍々しい気配を察知し、調査に乗り出していた。
「こっち……妙に冷たい……」
蒼の肩が震えるのは、寒さか、胸元に伝う水滴のせいか、それとも。
廃墟のような旧浴室には、誰かの気配と、古びた結界の跡があった。
「忍魔――この世ならざる“術者”のなれの果てだと、記録されてる存在……」
ZEROが囁く。
「けれど、これだけじゃ情報不足ね……」
と、楓が眼鏡をカチリと切り替えた瞬間。
\ゴオオオォォォ……/
湯煙の中から浮かび上がる影。
「ようこそ……我が湯に。くノ一ども……」
肌の透けた着物をまとい、身体のあちこちから**異形の術式が浮かび上がる“忍魔”**が姿を現した。
「お前、何者だ!」
蒼が鞭を構え、じりじりと距離を詰める。
「私はかつて“封印”された忍術者。だがこの湯に満ちた欲念と魔力が、私を呼び起こしたのだ」
その言葉と共に、忍魔の袖から黒い触手状の霧が伸び、蒼の身体へと絡み付く。
「っ……くぅっ!? な、なにこれ……身体が熱……ッ!」
蒼の身体のナイスバディなラインをなぞるように、忍魔の術が絡みつく。
「ふふ、心も身体も……女として目覚めていくのか?」
「言わせておけばぁぁっ!!」
紅が叫び、双刃を抜いて駆ける。
――【紅・覚醒】――
「うちの仲間に、手を出すなッ!」
怒気と共に紅の双刃が“交差”する。
すると、刃が赤く脈動し、長さが変化――
紅の手の中でそれは、大きな一振りの薙刀へと変わった!
「蒼、今こそ返す言葉があるわ。あなたがあの日言ってくれた言葉!」
「え、どの?」
「“胸が小さくても、斬れれば良い!”ってヤツよ!!」
紅が風のごとく跳ね、忍魔の影を薙ぎ払う!
\ズバアァァァン!!/
影が吹き飛び、蒼の拘束も解ける。
「……ふぅ、危ないとこだった。変なトコ触られてた……っ」
「どこが“変なとこ”か詳しく述べよ」ZEROの棒読みツッコミが入る。
「お主ら……実に面白い……次こそ、その力、我がものに……」
影は完全には消えていない。忍魔の本体は、どこかに“拠点”を持っている――
◆◇◆
戦いが終わり、温泉に戻った蒼たち。
だが、気がつけば――蒼の背中には、小さな印のような痣が浮かび上がっていた。
「なに、これ……」
それは、忍魔との“何かのリンク”を示すものなのか。
あるいは、彼女の**前世“烈火”**との関係が深まる予兆か――
風が揺らぎ、湯宿の灯が、静かに揺れていた。