番外編「ZEROの戸惑いと嫉妬?」
「……紅と蒼、最近距離が……近い」
影――通称ZEROは、いつものように無表情のまま、天井を見つめていた。
その声はまるで棒読みのようだが、どこかモゾモゾと落ち着かない。
ふと、隣室から聞こえる声。
「蒼〜、今日は一緒に寝ようよ!」
「え、ちょ、紅!? お、おい、それは反則だって!」
(……まただ)
ZEROの黒いフードが、ピクリと揺れた。
「……別に、気にならない。私は影……任務優先……感情など、不要」
そう言いながら、彼女の耳(※フードの猫耳)だけがピクピク反応していた。
だが次の瞬間――
「影、聞いてくれる? 紅にキスされてさ、ドキドキが止まらなくて……!」
蒼の言葉を背後から不意に聞かされたZEROは、バッと振り返った。
「……それは、報告義務……ありますか?」
「いや、あの、報告ってわけじゃ……」
蒼が苦笑すると、ZEROは少しだけ眉をひそめた。
「……蒼の心拍数、上昇。これは、危険信号」
「それって、どういう……」
「……検証する。私と、同じ距離で……ドキドキするか」
唐突にZEROが蒼に距離を詰めた。
至近距離、顔が数センチまで近づく。
「ひ、ひゃっ……お、お前、マジで美人顔やめろ!ドキッとすんだよ!」
「……やはり反応。データ更新。蒼、恋愛対象に分類」
「やめて!棒読みでそういうこと言うのやめてくれ!」
その直後、ふすまがバン!と開く。
「蒼ー!? 何その距離!? …ゼーロォーー!!!」
紅の怒りが爆発した。
「これは……違う。私はただ、データを……」
「またデータで済まそうとして!!」
「おっぱい小槌、構えてるー!? 楓、落ち着けー!!!」
「皆、喧嘩はダメぇええ!!」
(※楓、なぜかハンマー構え中)
その日、部屋中が騒がしくも、どこか甘く、エロく、賑やかに満ちていた。
ZEROはそっとつぶやく。
「……次は、私のターン……かも」
その顔は、ほんの一瞬だけ、ほんのわずかに――
微笑んだように見えた。