番外編 Episode「ZERO、誘惑される!?」
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番外編 Episode「ZERO、誘惑される!?」
忍の道をゆく寡黙な影に――まさかの恋愛フラグ!?
“感情のないはずの少女”に芽生える、淡い、そして危うい衝動。
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ある夜、任務帰りの蒼と紅、そして楓が眠りについたあと。
ひとり、木の上に座っていた影――ZEROは、夜風に揺れる葉の音を聞いていた。
「……任務完了。異常なし」
そのとき――
「ふふっ、夜風に当たるには、ちょっと肌寒くない?」
蒼がひょっこりと現れ、フードの横に腰を下ろした。
「……なぜ来た?」
「なんとなく、だよ。眠れなかったからさ」
蒼の髪がふわりと夜風に舞い、ZEROの顔にかかる。
ほんのわずかに、ZEROの肩が揺れた。
「……蒼」
「ん?」
「……なぜ、私に優しくする?」
蒼は少し驚いたように目を瞬かせたが、すぐに穏やかに笑った。
「ZEROが私たちに優しいから……かな。無意識でも、さ」
「……私は、そういう感情、ない」
「本当に?じゃあ、これは?」
蒼は不意に、ZEROの頬に指先を伸ばした。
その指はふわりと柔らかく、そして――
ZEROのフードの猫耳に、指をちょんと触れた。
「ぴくっ……」
「……反応した」
「……や、やめろ」
「可愛いんだから、しかたないでしょ?」
蒼がくすりと笑い、ZEROにぐっと顔を近づける。
その瞬間――
「――なんのつもりだ」
ZEROの瞳が、金色に輝いた。
眼帯の奥の【神目】が開き、蒼の表情を静かに、しかし熱を帯びたまなざしで捉えた。
「ん……からかっただけ、だよ。でも……」
蒼は不意に、ZEROの肩に寄りかかる。
「……キス、してみる?」
「っ……!」
「反応したね。やっぱり、ZEROにも“心”はあるよ」
ZEROの頬が、わずかに紅潮していた。
いつも無表情なその顔が、ほんの一瞬だけ揺らぐ。
そして……
「……蒼。今度から、変なことを言うときは……覚悟しておけ」
「ふふ、じゃあ次は本当に……誘惑してみようかな?」
「……。」
ZEROはそっと顔を背けたが、耳まで真っ赤になっていた――
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蒼の独り言:
「んー……ZERO、可愛いよなぁ……もしかして、私、紅だけじゃなくて……あ、やば」