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Sランクアイドルと作る絶品ダンジョン飯!~社畜Fランク探索者の俺が、料理スキルで成り上がるのはどう考えてもおかしい件~  作者: 咲月ねむと


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51話 伝説の後日談

天空の大樹ユグドラシル攻略。


そして伝説の世界樹の果実ゲット。


この前代未聞の快挙は、探索者界隈のみならず、一般社会にも大きな衝撃をもって伝えられた。ニュース番組やワイドショーでも特集が組まれ、「料理人Sパーティー」の名は、もはや伝説として語られるようになっていた。


『Sランクパーティーでも攻略不可能と言われたユグドラシルを制覇!』


『メンバーはアイドル、シェフ、鍛冶師、そして謎の料理人S!?』


『彼らは一体何者なのか!? 次なる目標は!?』


世間の注目度は最高潮に達し、「料理人S」の正体に関する考察は、さらに過熱する一方だった。


「……なあ、神様」


会社に出社すると、田中が神妙な顔で話しかけてきた。


「ついに、世界樹まで攻略したんだってな。しかも、世界樹の果実まで食ったとか……。お前、もう人間超えてるだろ。正直に言え、本当は何者なんだ?」


その目は、もはやからかいではない。

少しの恐怖すら含んでいるように見えた。俺は、否定する気力すらなく、ただ乾いた笑いを浮かべるしかなかった。


(もう、否定しても無駄か……。いっそ、宇宙人とでも言っておくか……?)


そんな俺の苦悩をよそに、仲間たちはそれぞれの道を歩んでいた。


炎華は、ユグドラシルで手に入れた世界樹の枝と俺から預かった人魚の涙を使い、新たな調理器具の開発に没頭していた。今回は、包丁だ。 


「マーメイド・ティアーズ・ナイフ(仮)」と名付けられたそれは、どんな硬い食材も、素材の繊維を傷つけることなく、滑らかに切り分けることができるという。さらに、マーメイド・パンとセットで使うことで、互いの性能を高め合う特殊な効果も付与するらしい。

彼女の工房からは、連日、金属を打つ音と、楽しそうな鼻歌が聞こえてくるという。


一条シェフは、世界樹の果実から得たインスピレーションを元に、自身のレストランで期間限定の特別デザートコースを発表した。

その繊細かつ奥深い味わいは、食通たちの舌を唸らせ、予約は瞬く間に数年先まで埋まるほどの人気ぶりだ。


「料理人Sとの出会いが、私の料理を新たな次元へと引き上げてくれた」


と公言しており、それがまた「料理人S」の伝説に拍車をかけている。


そして、レイナさんは……。


世界樹の果実を食べた影響なのか、彼女の歌声には、聞く人の心を癒し、勇気づけるような、不思議な力が宿り始めたという噂が、ファンの間で囁かれていた。


ライブ会場では、


「レイナ様の歌声で長年の肩こりが治った!」


「失恋の痛みが消えた!」


といった真偽不明の体験談が続出しているらしい。本人は「気のせいですよー」と笑っているが、その笑顔は、以前にも増して輝きを増しているように見えた。


俺以外の全員が、なんだかすごいことになっている。


しかし俺だけが、相変わらずしがないサラリーマン兼、なんちゃって料理人のまま……いや、でも、マーメイド・パンともうすぐ完成するであろうマーメイド・ナイフがあれば、俺だって……。


俺たちの冒険は、それはもう確実にそれぞれの進化を促しているようだった。

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