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Sランクアイドルと作る絶品ダンジョン飯!~社畜Fランク探索者の俺が、料理スキルで成り上がるのはどう考えてもおかしい件~  作者: 咲月ねむと


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50話 伝説の果実

俺たちは、息を整え、ゆっくりと世界樹の果実に近づいた。

それは黄金色に輝くリンゴのような形をしており、手に取ると、ずっしりとした重みと生命力に満ちた温かさが伝わってくる。


表面からは、なんとも言えない芳醇で甘い香りが漂い、見ているだけで心が安らぐような、不思議な感覚に包まれた。


「これが……世界樹の果実……!」


レイナさんがうっとりと果実を見つめる。


「素晴らしい……。これほどの魔力と生命力を秘めた食材は、初めてだ」


一条シェフも料理人としての探求心を刺激されているようだ。


「すげぇ……。この輝き、このエネルギー……! これを素材に使えたら……!」


炎華も鍛冶師として興奮を隠せない様子だ。


俺も、この伝説の果実をあのマーメイド・パンでどう調理しようか、想像するだけで胸が高鳴る。果実を手に入れたのを見届けると、麓からアルヴたちがやってきて、俺たちを祝福してくれた。


「よくぞ、ルフの試練を乗り越えられた! おぬしたちは、真にユグドラシルに認められた者たちじゃ!」


長老が、満面の笑みで言う。

アルヴたちは、歌ったり踊ったりして、俺たちの偉業を称えてくれたのだ。


「これも、皆さんのおかげです。ありがとうございました」


俺たちが感謝を伝えると、アルヴたちは「礼には及ばんよ」と首を振り、「またいつでも、美味しい料理を作りに来ておくれ」と言ってくれた。どうやら、すっかり「森の料理番」として気に入られてしまったようだ。


アルヴたちに盛大に見送られ、俺たちはユグドラシルを後にした。帰り道は、アルヴたちが教えてくれた秘密の通路を使ったため、あっという間に麓まで戻ることができた。


疲労はピークに達していたが、心は充実感で満たされていた。そして手には、あの伝説の世界樹の果実がある。


「さあ、皆さん! 安全な場所に戻って、早速、この果実を味わいましょう!」


俺の提案に、全員が大きく頷いた。

目指すは、最高の食材を使った至福のまんぷく飯タイムだ。



***



しばらくして地上に戻り、安全なキャンプ地に落ち着いた俺たちは、いよいよ世界樹の果実を使った料理に取り掛かることにした。

これほどの食材だ。下手に手を加えるよりも、そのものの味を最大限に活かすべきだろう。


俺は、マーメイド・パンを取り出し、まずは果実を薄くスライスして、そのまま軽くソテーしてみることにした。

自動温度調整機能で最適な温度に設定。


フライパンに乗せると、ジュワッという音と共に、果実から甘く芳醇な香りが、さらに強く立ち上る。表面が軽くキャラメリゼされ、中の果汁がキラキラと輝いている。


「できました! まずは、『世界樹の果実のシンプルソテー』です!」


焼き立て熱々を仲間たちの前に差し出す。


「「「いただきます!」」」


全員が期待に満ちた表情で、黄金色の果実を口に運ぶ。


「…………!!!!!」


次の瞬間、全員の動きが止まった。


そして時が止まったかのような静寂の後……。


「あ……あまーーーーーーーーーいっ!!!」


レイナさんが天にも昇るような表情で叫んだ。


「なんだこの甘さ!? 砂糖なんて使ってないのに、濃厚で、上品で、後味がすっきりしてて……! 口の中が、幸せでいっぱいになります……!」


「……信じられない。これが、果実本来の甘味だというのか……。複雑で、それでいてどこまでもピュアな味わい……。全ての味覚が、歓喜している……!」


一条シェフも、普段の冷静さを失い、感極まった様子で呟いている。


「……う、うめぇ……! なんだこれ……! 甘いだけじゃない、食べただけで、体の疲れが全部吹っ飛んでいくような……力がみなぎってくる……! これが、伝説の力……!」


炎華も目を丸くして驚愕している。


俺も一口食べてみる。


……言葉を失った。


甘い。ただひたすらに、純粋で、深く、そして優しい甘さが広がる。舌の上でとろけるような食感。そして、飲み込んだ後、体の中から温かいエネルギーが湧き上がってくるような、不思議な感覚。


これが、世界樹の果実……!


次に残りの果実を絞って、フレッシュジュースを作る。黄金色の果汁は、まるで蜜のようにとろりとしていて、グラスに注ぐとキラキラと輝く。


ゴクリ、と一口飲む。


「「「…………はぁぁぁぁぁ〜〜………」」」


全員から同時に深いため息のような声が漏れた。果実のエキスが、体に染み渡っていく。

全ての細胞が、喜び、癒されていくような感覚。疲労なんて、どこかに消え去ってしまった。


「……すごい……。本当に、どんな病も癒せそう……」


「……究極の美味、とはこのことか……」


「……あたし、今ならどんな硬い金属でも打ち抜けそうな気がする……!」


俺たちは、世界樹の果実がもたらす、究極の甘味と、神秘的な力に、完全に魅了されていた。


これまでのどんなダンジョン飯とも違う。

まさに「伝説」と呼ぶにふさわしい食体験だった。


レイナさんは究極の甘味に、一条シェフは究極の食材に、炎華は世界樹の枝という最高の素材に、そして俺は最高の食材を最高の道具で調理できたという喜びにそれぞれ満たされていた。


これで大満足でユグドラシルでの冒険を終えることができた。


魔法のフライパンを手に入れ、伝説の果実を味わった俺、佐藤健太。

次なる「まんぷく飯」は、一体どんな味になるのだろうか? 俺たちの冒険と料理の探求は、まだまだ始まったばかりだ。

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