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Sランクアイドルと作る絶品ダンジョン飯!~社畜Fランク探索者の俺が、料理スキルで成り上がるのはどう考えてもおかしい件~  作者: 咲月ねむと


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47話 樹上の迷宮

数日後、俺たちは特殊な飛行艇で、雲の上にそびえ立つ天空の大樹ユグドラシルのふもとに降り立った。

見上げるほどの巨木……いや、もはや山脈のようだ。その幹には、巨大な洞があり、そこがダンジョンへの入り口となっている。


「で、でかい……!」


そのスケール感に、俺はただただ圧倒される。


「ここがユグドラシル……。空気中の魔力濃度が非常に高いな。樹自体が、膨大な魔力を蓄えているようだ」


一条シェフが、冷静に分析する。


「わぁ、なんだかワクワクしますね! 早く頂上に行って、果実食べたいなー!」


レイナさんは、いつも通り元気いっぱいだ。


「よし、行くぞ! 世界樹の枝、ゲットしてやる!」


炎華も気合十分だ。


俺たちは、巨大な洞から樹の内部へと足を踏み入れた。内部は、想像以上に広大で、複雑に入り組んだ通路や、巨大な空洞が広がっている。壁や天井からは太い根や蔦が垂れ下がり、足元には見たこともない植物が生い茂っている。


まさに、樹上の迷宮である。


そして、そこには強力なモンスターたちが待ち受けていた。


古代の森を守る巨大な樹木モンスター「トレント・エンシェント」や風のように素早く動き回り、鋭い風の刃を放ってくる「シルフ・ロード」。


「グォォォォン!」


「ヒュルルルル!」


トレントの硬い樹皮と圧倒的なパワー、シルフの素早い動きと回避能力に俺たちは苦戦を強いられる。


「くっ、シルフが速すぎる!」


「トレントの再生力も厄介だ……!」 


レイナさんと一条シェフが前衛で奮闘し、炎華が魔法で援護する。


しかし、またしても俺は……。


「うわっ!」


トレントの振り下ろした枝攻撃を、とっさにマーメイド・パンで受け止める。 ガキン!という鈍い音がして、パンは無傷だったが、俺の腕は痺れてしまった。


「おい! 料理人! フライパンを盾代わりにするな! 傷がついたらどうするんだ!」


炎華に怒鳴られる。そりゃそうだ。

でも、とっさの時には役立つかもしれない……。


「そうだ! 植物系のモンスターなら、火に弱いんじゃ……!?」


俺は思いつきで、マーメイド・パンの自動温度調整機能を最大にし、高熱を発する状態にしてトレントの足元に押し当ててみた。

もちろん安全な距離からだ。


ジュッ!


「グォォォ!?」


トレントが熱さに苦しむように動きを止めた。


「よし、今だ!」


その隙を突き、仲間たちの連携攻撃が決まり、見事トレントは撃破。


「やるじゃないか、S! 意外なところで役に立つな!」


「ほう、あのフライパン、そんな使い方もできるのか……」


仲間たちから、少しだけ感心された気がする。


マーメイド・パンのおかげで、俺も戦闘に貢献できる……かもしれない?


そんなこんなで、迷宮のような樹の内部を進んでいくと、俺たちは奇妙な集落にたどり着いた。樹の枝や葉で作られた、小さな家々。

そこに住んでいたのは、身長50センチほどの、尖った耳を持つ、可愛らしい小人たちだった。


「あれは……アルヴ族か。ユグドラシルに住むと言われる、森の妖精だ」


一条シェフが説明する。

アルヴたちは、最初は俺たちを警戒していたが、レイナさんが持ち前の笑顔とコミュニケーション能力で話しかけると、すぐに打ち解けてくれた。


彼らは、ユグドラシルの守り手であり、樹と共に生きる平和な種族だった。


俺たちが世界樹の果実を探していることを話すと、長老らしきアルヴが困ったような顔で言った。


「世界樹の果実は、頂上にある『聖域』に実るのじゃが、そこへ至る道は複雑で、強力なガーディアンにも守られておる。人間がたどり着くのは、容易ではないぞ」


「なんとかなりませんか? 私たち、どうしてもその果実が必要なんです!」


レイナさんがお願いすると、長老はうーんと唸り、やがて俺の方を見て言った。


「……む? おぬしからは、なんだか、とても美味しそうな匂いがするのう……。もしや、料理人か?」


「え? あ、はい。一応……」


「ほう! それならば、頼みがあるのじゃ! わしらに、何か美味しい料理を振る舞ってくれんかのう? もし、わしらを満足させることができれば、頂上への近道を教えてやらんでもないぞ」


まさかのここで料理の腕が試されることになった。これは、マーメイド・パンの性能を見せつける絶好のチャンス。

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