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Sランクアイドルと作る絶品ダンジョン飯!~社畜Fランク探索者の俺が、料理スキルで成り上がるのはどう考えてもおかしい件~  作者: 咲月ねむと


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34話 極寒への備え

灼熱の火山から一転、俺たちの次なる目的地は【極寒の雪山】に決まった。Bランク相当の万年雪に覆われた極寒のダンジョンだ。

狙うは、濃厚で栄養満点と噂の「イエティミルク」と希少な鉱石「氷晶鋼(ひょうしょうせき)」だ。


「雪山か……今度は凍え死にそうだ……」


暑がりで寒がりの俺は、またしても目的地の決定に憂鬱だった。しかし、前回の火山での経験とロイヤリティ収入を活かし、今度は万全の防寒対策を整えることにした。


高性能な発熱インナー、防水防風機能付きのアウターウェア、雪山用のブーツとグローブ、そして顔を覆うフェイスマスク。さらには、携帯カイロも大量に準備した。


調理器具は、低温下でも火力を維持しやすい特殊なバーナーを新調した。イエティミルクを使った料理のレシピもいくつか調べて、準備は万端……装備だけは。


「極寒環境における人体の生理的変化とそれに対応する栄養摂取について……ふむ、興味深いデータが多いな」


一条シェフは、雪山環境に関する学術論文を読みふけり、データ分析に余念がない。

彼の探求心は、料理だけに留まらないらしい。


「イエティミルクって、どんな味なんでしょうね? 牛乳より濃いのかな? それでプリンとか作ったら、絶対美味しいですよね!」


レイナさんは、雪山でもその食欲は健在だ。

美味しいミルクデザートへの期待で目を輝かせている。


「氷晶鋼……。低温環境でしか結晶化しない、魔力を帯びた金属。これで刀を打てば、氷の力を宿した名刀が作れるかもしれない……!」


炎華は、鍛冶師としての血が騒ぐのか、氷晶鋼への期待に胸を膨らませている。

寒さには、鍛冶で火を扱っているせいか、比較的強いようだ。「寒いのは嫌いじゃないぜ」と明らかに強がっている節は見えるが……。


それぞれの思いを胸に、俺たち四人は極寒の雪山へと足を踏み入れた。ゲートをくぐった瞬間、痛いほどの冷気が全身を襲う。

目の前には、これ以上ない美しさの銀世界が広がっていた。


「うわー! 雪だー! 真っ白ー!」


レイナさんは、まるで子供のようにはしゃぎ。新雪に足跡をつけて駆け回っている。


(……元気だな、本当に)


「……寒い……。息をするだけで肺が凍りそうだ……」


俺は、完全防備のはずなのに、体の芯から凍えるような寒さに震えていた。

フェイスマスクもすぐに凍りつきそうだ。


「気温はマイナス20度を下回っているな。風も強い。体温管理を怠れば、数時間で凍傷になるぞ。各自、注意しろ」


一条シェフが、タブレットで気温を確認しながら冷静に警告する。


「ふん、この程度の寒さ、どうってことないぜ」


炎華は、腕を組んで平気な顔をしている。

いつまで痩せ我慢をするつもりなのか。


雪山特有のモンスターも、さっそく俺たちを歓迎してくれた。

鋭い牙を持つ白い狼「アイスウルフ」の群れや雪でできた巨大な人形「スノーゴーレム」。


「グルルルル!」


「ゴゴゴゴ……!」


アイスウルフの素早い動きと、スノーゴーレムの重い一撃に、俺は完全に動きを封じられる。しかし、またしても仲間たちが頼もしかった。


「はぁっ!」


レイナさんが、雪上でも変わらぬスピードでアイスウルフを翻弄し、的確に仕留めていく。


「フリーズ!」


一条シェフが、水の魔法を応用したのか、スノーゴーレムの動きを氷で封じ込め、その隙に弱点であるコアを破壊する。

そして、意外な活躍を見せたのが炎華だった。


「燃えろぉ!」


彼女が放つ火属性魔法は、氷や雪でできたモンスターに対して効果抜群だったのだ。アイスウルフは炎に焼かれて逃げ惑い、スノーゴーレムは熱で溶かされていく。


「へへん、どうだ! あたしの火魔法だって、役に立つんだぜ!」


得意げに胸を張る炎華。

その姿は、なんだか頼もしく見えた。


俺は……まあ、みんなの邪魔にならないように、必死に後をついていくだけだ。

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