31話 灼熱調理! 激辛チリコンカン風
「よし、皆さん、お疲れ様でした! 早速、この新鮮なサラマンダーで、激辛料理を作りますよ!」
俺は、無事にサラマンダーを討伐した仲間たちに宣言し、調理に取り掛かった。
目の前には、まだ熱を帯びているかのように赤々としたサラマンダーの肉塊。
見るからに、一筋縄ではいかなそうだ。
「サラマンダーの肉は、それ自体が強烈な辛味と熱を持っている。普通の調理法では、その刺激が強すぎるだろうな」
一条シェフが、冷静に分析する。その通りだ。この肉を美味しく食べるには、まずその強すぎる個性をコントロールする必要があるのだ。
俺は、まず肉塊を適度な大きさに切り分け、持参した水で表面のぬめりや汚れを洗い流す。
そして、今回の秘密兵器、ダンジョン内で採取した「冷却ハーブ」と数種類のスパイス――コリアンダー、クミンなどの辛さを和らげる効果があるスパイスをすり潰したものを、肉にたっぷりと揉み込んでいく。
「ほう、冷却効果のあるハーブか。面白い使い方をするな」
一条シェフが、興味深そうに俺の手元を見ている。
「へぇ……あたしは鍛冶でしか使ったことなかったけど、料理にも使えるんだな、それ」
炎華も意外そうな顔で呟いている。
鍛冶師の彼女にとっては、冷却ハーブは金属を冷ますための道具、という認識だったのだろう。
下処理を終えた肉を、今度は細かくミンチにする。これもなかなか骨が折れる作業だ。
肉質がしっかりしていて弾力もある。
レイナさんが「手伝います!」と短剣で手際よく切り刻んでくれたおかげで、なんとかミンチ状にすることはできたが……。
(本当にこの子、何者なんだ……)
今日のメニューは、「灼熱サラマンダーの激辛チリコンカン風」だ。
耐熱コーティングされた大鍋を焚き火にかけ、オリーブオイルを熱し、刻みニンニクと玉ねぎを炒める。
そこに、サラマンダーのミンチ肉を投入!
ジュワァァァッ!
鍋から一気に刺激的な香りと熱気が立ち上る!
「うおっ! けほっ、けほっ!」
強烈な辛味成分を含んだ蒸気に思わずむせてしまう。目や鼻にもツンとくる。
これは、換気をしっかりしないとダメなやつだ。
「大丈夫か? 無理するなよ」
一条シェフが、少し心配そうに声をかけてくれる。意外と優しいところもあるのだ。
肉に火が通ったら、ダンジョン内で見つけた豆――ボルケーノビーンという一条シェフが見つけてきた豆に、カットトマト缶、大量の唐辛子、チリパウダー、クミン、オレガノなどのスパイスを加える。
グツグツと煮込まれていく鍋の中身は、まるでマグマのように真っ赤だ。
立ち上る湯気も、心なしか赤く見える。
調理している俺自身も汗だくで、さぞ顔は真っ赤になっていることだろう。
冷却インナーを着ていても、この熱気と辛さの前では限界があるというわけだ。
「はぁ、はぁ……これは、文字通り、命懸けの料理だな……」
味見をしようとスプーンで少量すくってみるが、その刺激臭だけで躊躇してしまう。
意を決して口に入れると……。
「かっっっら!!!!!」
口の中が燃えるようだった。
しかし、辛さの奥に、凝縮された肉の旨味と、スパイスの複雑な香りが感じられる。
……これは、イケるかもしれない!
「よし、あとはじっくり煮込んで、味を馴染ませれば完成だ……!」
俺は、汗を拭いながら、鍋に蓋をし、火力を調整する。灼熱の火山洞窟で作る、灼熱の激辛料理。
果たして、そのお味はいかに……?




