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Sランクアイドルと作る絶品ダンジョン飯!~社畜Fランク探索者の俺が、料理スキルで成り上がるのはどう考えてもおかしい件~  作者: 咲月ねむと


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29話 ツンデレ鍛冶師、炎華登場

火球が少女に直撃する! と思った瞬間、一条シェフが動いた。


「シールド!」


彼が叫ぶと、どこからともなく水の障壁が現れ、火球を寸前で防いだ。


「えっ!?」


驚く少女。

その隙に、レイナさんがファイアリザードの群れに突っ込んだ。


「はぁっ!」


目にも止まらぬ速さで短剣を振るい、ファイアリザードを次々と斬り伏せていく。その動きは、灼熱の環境下でも全く衰えていない。

あっという間に、ファイアリザードは全滅し、素材へと変わり果てた。


「ふぅ、大丈夫だった?」


レイナさんが、少女に笑顔で声をかける。


もちろん俺も慌てて駆け寄った。


「け、怪我はない!?」


少女は、助けてくれた俺たちを、ぽかんとした顔で見上げていたが、すぐにハッとしたように立ち上がり、威勢よく言った。


「……別に、あんたたちがいなくても、あたし一人でなんとかなったし! ちょっと油断しただけだって!」


赤毛のポニーテールを揺らし、強気な目でこちらを睨んでくる。

……助けてもらった態度じゃないな、この子。


「まあまあ、無事でよかったじゃない。私はレイナ。こっちは佐藤健太さんと、一条蓮シェフ」


レイナさんが、自己紹介をする。


「……あたしは、赤嶺炎華(あかみねほのか)。見ての通り、探索者で……鍛冶師だ」


炎華は、ぶっきらぼうに名乗った。


(鍛冶師? 危険なダンジョンに一人で?)


俺の疑問は誰しもが思うものだったようで、


「鍛冶師が、どうしてこんな場所に?」


一条シェフが、冷静に尋ねる。


「……別に、あんたたちには関係ないだろ。あたしは、ここでしか採れない特別な鉱石を探しに来たんだよ」


炎華は、警戒心を露わにしている。

特に見るからに弱そうな俺に対しては、「なんだ、こいつ?」みたいな視線を向けてくる。

本当に失礼なやつだ。


「特別な鉱石……? もしかして、『炎竜鋼えんりゅうこう』のことか?」


一条シェフが、心当たりがあるように言った。


「なっ……!? なんで、あんたがそれを……!」


炎華が、驚きと警戒の色を濃くする。


「ふん、その程度の知識、高ランクの探索者なら常識だ。炎竜鋼(えんりゅうこう)は、サラマンダーが生息するような、極めて高温の環境下でしか生成されない希少金属。最高の武具を作るための素材として、一部の鍛冶師の間では垂涎の的と聞く」


「……詳しいんだな、あんた。もしかして、あんたも鍛冶師か?」


「いいや、私は料理人だ。だが、最高の料理のためには、最高の知識も必要だからな」


一条シェフが、さらりと言う。

その言葉に、炎華は何かを感じたのか、少しだけ態度を和らげた。


「……まあ、そういうことだ。あたしは、その炎竜鋼(えんりゅうこう)を手に入れるために、このダンジョンの奥を目指してる。あんたたちは?」


「私たちは、サラマンダーを狩りに来たの。美味しいお肉が目当てで!」


レイナさんが、元気よく答えた。


「はぁ!? サラマンダーを!? 食うために!?」


炎華は、信じられないといった顔で、レイナさんと俺たちを交互に見た。


「正気か、あんたたち……。サラマンダーなんて、Bランクでもトップクラスの強敵だぞ? しかも、こんなひ弱そうな奴まで連れて……」


(やっぱり、俺のこと見下してる!)


「ひ、ひ弱じゃない! 俺だって、やるときはやるんだ!」


俺が反論すると、炎華は鼻で笑った。


「ふーん。まあ、いいや。どうせ目的地は同じ方向みたいだし、一時的に協力してやってもいいぜ? あたしは鉱石の場所には詳しいし、あんたたちは戦闘は得意なんだろ? 利害は一致するはずだ」


ずいぶんと上から目線な提案だが、彼女の鉱石に関する知識や、このダンジョンへの詳しさは役に立ちそうだ。

何より、レイナさんが乗り気だった。


「いいね! 炎華ちゃん、よろしくね!」


「ちゃん付けで呼ぶな!」


こうして、俺たちのパーティーに、ツンデレ鍛冶師の少女、赤嶺炎華が加わることになった。


四人になった探索は、さらに賑やかになりそうで、胃がキリキリとまた痛み始めるのも時間の問題ではないかと、俺は悟った。

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