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Sランクアイドルと作る絶品ダンジョン飯!~社畜Fランク探索者の俺が、料理スキルで成り上がるのはどう考えてもおかしい件~  作者: 咲月ねむと


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28話 灼熱の火山と新調装備

次なるダンジョン探索の目的地は、【灼熱火山の洞窟】に決まった。

Bランク相当の活火山内部に広がる危険なダンジョンだ。目的は、燃えるような辛さと旨味を持つという伝説の魔獣「サラマンダー」の肉。


「火山かぁ……暑いの苦手なんだよなぁ……」


俺は目的地の決定に若干憂鬱だった。

ただでさえ汗っかきなのに、火山のダンジョンなんて、想像しただけで茹で上がりそうだ。


「ふむ、サラマンダーか。火山の高熱環境に適応した独自の生態を持つ魔獣……。その肉質と風味、非常に興味深い」


一方、一条シェフは、未知の食材への探求心からか、冷静な分析をしつつも、どこか楽しそうだ。その手には、すでに火山ダンジョンの生態系に関する分厚い資料が握られている。


さすが、準備が早い。


「サラマンダーのお肉! きっと、すっごく辛くて美味しいんですよ! 激辛料理、楽しみだなー!」


そして、レイナさんは、いつも通り食欲全開で期待に胸を膨らませている。

激辛好きだったとは、初耳だ。


まあ、決まったものは仕方がない。


俺も、ただ憂鬱になっているだけでは進歩がない。そうだ、この前のロイヤリティ収入があるじゃないか!


(火山対策グッズ、揃えてみるか……!)


ネット通販や探索者向けのアウトドアショップを巡り、火山ダンジョン攻略に役立ちそうなアイテムをいくつか購入した。


・ 冷却機能付きインナーウェア: 特殊な冷感素材と小型冷却ファンが内蔵されており、体温上昇を抑えてくれるらしい。


・耐熱グローブ&ブーツ: 溶岩地帯や高温の岩場でも、ある程度安全に行動できる。


・ 耐熱コーティングされた調理器具: フライパンや鍋など。高熱の中でも変形しにくく、サラマンダーの炎にも耐えられる……かもしれない。


・ 大量のスポーツドリンクと塩飴: 熱中症対策だ。


これらの新調装備をリュックに詰め込み、俺は少しだけ前向きな気持ちで、火山ダンジョンに向かう準備を整えた。


形から入るタイプなのだ、俺は。



そして週末。


俺たち三人は、灼熱火山の洞窟の入り口に立っていた。洞窟からは、むわっとした熱風と、硫黄の匂いが吹き付けてくる。


「うわ……本当に暑そう……」


「心配ない。このタブレットには、ダンジョン内の温度分布と安全なルートが表示されている。冷静に進めば問題ない」


一条シェフが、最新鋭っぽいタブレットを操作しながら言う。


「さあ、行きましょう! 目指すはサラマンダーです!」


レイナさんの元気な号令で、俺たちは灼熱の洞窟へと足を踏み入れた。

内部は、想像以上の過酷さだった。壁や地面も含めて温度が高いのか、足元からも常に熱気が立ち上ってくる。


時折、溶岩が流れるエリアや高温の蒸気が噴き出す場所もあり、一歩間違えれば大火傷だ。

新調した冷却インナーがなければ、とっくにぶっ倒れていただろう。


「はぁ……はぁ……きつい……」


俺は、開始早々バテ気味だ。


レイナさんは、暑さにも負けずぴょんぴょんと軽快に進み、一条シェフは、冷静に周囲を分析しながら、的確なルートを指示している。


そんな過酷な道中、溶岩が流れる川のような場所を通りかかった時だった。


「助けてー!」


か細い、しかし必死な叫び声が聞こえたのだ。声のする方を見ると、溶岩地帯の少し開けた場所で一人の少女が数匹のモンスターに囲まれていた。


モンスターは、全身が炎に包まれたトカゲのような魔物「ファイアリザード亅である。


「まずい!」


俺たちが駆け寄ると、少女は赤毛のポニーテールを振り乱し、手に持ったハンマーで必死に応戦している。作業着のような服装で、背中には大きなリュックを背負っている。

どうやら探索者のようだ。しかし、多勢に無勢、かなり追い詰められている様子だ。


「グルァァァ!」


ファイアリザードの一匹が、少女めがけて火球を吐き出した。


「危ない!」


俺は思いがけず叫んだ。

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