第8章:掌握
クロノ大尉は、X-00 TERMINUSのコフィンシステムの完全解放が目前に迫る中、その決断を迫られていた。フェーズ3の解放は、通常では耐え難い精神的・肉体的な負荷を操縦者に強いるものだった。だが、今、この瞬間が戦局を決するカギとなる。
システムが警告を発するたび、クロノは目を閉じて深く呼吸をする。彼の脳内で鳴り響く信号が、まるで鼓動のように強く、重く感じられる。その瞬間、彼は覚悟を決めた。戦場での勝利、仲間の命、そしてこれからの未来を守るためには、このリスクを乗り越える必要があった。
「フェーズ3、解放。」クロノの声は冷静だったが、内心は揺れていた。瞬間的に、彼の神経が激しく刺激され、視界が歪んでいく。しかし、その歪みの中でも、彼は目の前に迫る敵の動きを捉え、迅速に反応していく。
X-00 TERMINUSは、まるで生き物のようにクロノの指示に反応して動き出した。神経リンクが完全に確立し、機体の動きは彼の意識と一体化したかのようにスムーズに行われる。だが、その感覚と引き換えに、彼の意識は限界に達しようとしていた。視界がちらつき、音が遠くなる。彼の脳は、機体の動きに完全に適応しているが、その適応には限界があり、痛みと混乱が伴う。
「くそ、もう少しだ…」クロノは歯を食いしばりながら、レブナントの攻撃をかわし、反撃の機会を伺う。彼の手は震え、視界の端に赤い斑点がちらつく。それでも、彼は一歩も引くことなく、戦い続ける。
その時、彼の背後からVictorの支援部隊から連絡が入る。クロノの心臓が高鳴る。その知らせは、まさに命の水のように感じられた。ここからが本当の勝負だ。時間との戦い、そして限界を超えた戦闘が待っている。
「もう少しだ。」クロノは自分に言い聞かせるように呟き、再び冷静さを取り戻した。彼はわずかな隙間を見逃すことなく、レブナントに向けて全力で攻撃を仕掛ける。
フェーズ3の力が、クロノを押しつぶすように感じられたその瞬間、彼の意識が一気に引き戻される。神経リンクの過負荷が彼の脳に激しく波及し、意識が薄れる。だが、その時、X-00 TERMINUSは信じられないほどの速さで動き、レブナントの攻撃を次々と無力化していく。
「フェーズ3、完全制御。」クロノの声が響き、機体が一瞬で動きを止める。戦局は、彼の手の中で変わった。その瞬間、レブナントの最後の一撃がクロノの目の前で止まり、戦闘は終了した。