第7章: 終焉の先に
支援のおかげで安心したからなのか現状の把握に余裕ができる神経リンクの段階を一気に押し上げる
クロノの脳内で膨大なデータが流れはじめる。
TERMINUSのシステムが完全に自分と連携していることは確信していたが、それでもその反応の速さに身を任せることは一瞬たりとも気が抜けない。
フェーズ2のリンクが脳に与える負荷は想像を絶するほど重く、まるで精神が引き裂かれるような感覚に苛まれていた。それでも、クロノは冷静を保とうと必死だった。
「支援部隊が到着。レブナントに接近中。」リアン少尉の声が、クロノの意識の中に静かに響いた。
それは一筋の光明だった。これまで独りで戦い続けてきたが、今度こそ仲間が助けに来る。クロノの目の前に広がる戦場は、暗い空に浮かぶ巨大なレブナントたちの影が支配していた。だが、クロノはそれらをただの機械ではなく、自分の命運を共にしている敵として見据えていた。
「全機、ターゲットを確認。目標、レブナント群。撃破する。」司令部からの命令が響く。
クロノは短く頷き、TERMINUSを前進させた。ここで戦うことができなければ、この戦争は永遠に終わらない。それを彼は理解していた。機体の内部で響く警告音や警告メッセージに目を通す余裕はない。彼の全神経は戦闘に向けられていた。
レブナントの攻撃が迫ってくる。それはまるで目の前に立ちはだかる壁のように巨大で、圧倒的だった。クロノはその恐怖を感じ取ることなく、フェーズ2による神経リンクを駆使して、速さと直感で避け続ける。攻撃を受ける瞬間に体を動かすのではなく、あらかじめ攻撃が来る場所を予測し、次に何をすべきかを本能的に導き出している自分に気づく。
そのとき、突如として、彼の脳内に異常が発生した。痛み、強烈な痙攣、そして視界の歪み。目の前のレブナントが二重に見える。フェーズ2のリンクが予想以上に脳を圧迫していたのだ。
「これはまずい…」クロノは無意識に口に出す。
その瞬間、TERMINUSが反応し、システムが自動的に神経負荷を調整する。機体の調整が完了したそのとき、クロノは再び意識を取り戻し、視界が鮮明になった。だが、体力と神経の限界は近づいていることを彼は感じていた。
「支援部隊がレブナントの前線に到達。戦況は好転しつつあります。」リアンの報告が届く。
クロノは再び手をレバーに置き、深く息を吸い込んだ。支援部隊の到着で、戦局は有利に進展しつつあった。しかし、この戦闘の終わりが近づくわけではない。クロノの中で、戦闘が一層苛烈になる予感が強くなる。
「レブナント、エネルギーを充填中。今すぐ反撃しないと…」リアンの声には焦りがこもっていた。
クロノはもう迷わなかった。自分の限界を試すのではなく、戦いを終わらせるために戦うのだ。彼の脳内でリンクがさらに深まり、TERMINUSの全能力が解放されていく。その瞬間、クロノは自分がもはや機械のように、戦闘のために作られた存在だと感じることができた。感情は無い、ただ戦うことだけが彼の役割であり、それが彼の目的そのものだ。
「行け、TERMINUS。」クロノは静かに呟き、機体を加速させた。
レブナントの攻撃が次々に襲いかかるが、今度はそれらがただの予測でしかなくなった。彼の動きが、予測通りに、機械のように正確に、瞬時に反応する。無数のレーザーやミサイルが次々に彼の周りを過ぎていく。その中で、クロノはただ一つの目標に集中していた。
「撃破!」クロノはつぶやくと同時に、TERMINUSの武装が反応し、レブナントの一体が爆発を起こす。
だが、戦いはまだ終わらない。クロノは次の敵に目を向け、再びシステムをフル活用していく。彼の脳内で次々に展開される戦闘データが、まるで未来の戦闘を映し出すように流れていった。あとはただ、戦い抜くだけだった。
戦局は次第にクロノの側に有利に進展し、レブナントの数が減っていく。
それが彼にとっての使命であり、試験機であるTERMINUSの真の力を証明する瞬間であった。
「もう少しだ…」クロノは冷静に呟きながら、最後の一撃に全てを賭ける。