第7話 ときめき
ねぇ
最初からやり直していいかな?
えっ?
コホン
よく来てくれたね
ブレッドだよ
ん?
ブレッドが両腕を広げて
問いかけるような眼差しで
リサを見る。
リサは躊躇いがちに
ブレッドの前に歩み寄ると
逞しい腕に包まれた。
ブレッドの爽やかな香りの中で
ドキドキしながらも居心地の良さを感じた。
まわした腕を緩ませて
リサの瞳を覗き込みながら
君は僕を覚えてたの?
ブレッドが問いかける。
はっきりは覚えていないんです
僕は今
ぼんやりだけど思い出した
二人でよく
シーソーやブランコに乗ったんだよ
家族同士でピクニックにも行ってたなぁ
そうですか
家族がいて
親しい人たちに囲まれて
幸せを感じていた時間ですね
ポツリとリサが呟いた。
それを聞いたブレッドが
もう一度 リサを抱き寄せる。
ありがとう
会いに来てくれて
久しぶりに人の温かさに触れたよ
悲しみの中
身勝手な人たちの冷たい仕打ちに
さぞかし嫌気がさしていたことだろう
そう思ったリサは
ブレッドの背中に手を添えた。
いつまでもこうして
あなたの気持ちに寄り添いたい
そんなことを思いながら。
長居をしては
お仕事の邪魔ですよね
私はこれで失礼します
添えた手で背中をトントンと叩き
ブレッドの腕の中から離れた。
ねぇ
どこのホテルに滞在してるの?
レイモンドホテル
えっ?
クスッ
偶然だったんです
あなたのホテルだなんて
思いもしませんでした
リサを見つめていたブレッドが
今夜
食事を一緒にどう?
と笑顔で聞いた。
えぇ ぜひ
頬を染めて
嬉しそうに頷くリサは
眩しいくらいに輝いている。
ブレッドは
その笑顔に見とれている自分に驚き
じゃ
スケジュールの確認を
そう言いながら
リサから視線を外した。
インターホンで
スケジュールを確認する。
OKだよ
7時半に
ホテルのロビーで会おう
えぇ
じゃ またあとで
ブレッドに言葉をかけて
リサは部屋をあとにした。
エレベーターに乗ってからも
気持ちが弾んでいる。
最初はどうなることかと思ったけど
やっぱり会いに来て良かった
エレベーターを降りると
玄関前に
車が待っているのが見える。
来たときと同じように
運転手が名前を確認してドアを開けてくれた。
車に乗り込むと
先程の約束を思い出して
気持ちが浮き立つリサだった。




