第6話 誤解
すぐにでも立ち上がって
部屋を出て行きたかったが
そうすることは
彼の言葉を認めることになる。
泣くのを我慢しているから
喉の辺りが痛い。
それに堪えながら
リサは静かに話し出した。
今のあなたの言葉は
辛いときに心ない人たちから受けた
酷い仕打ちのせいで
あなたの心の傷が癒されていないことの表れ
だから
聞かなかったことにします
私がここに来たのは
本当にお金のためなんかじゃないんです
私が両親を亡くしたときに
ワグナーご夫妻には
葬儀にも参列していただいて
温かい言葉もかけていただきました
だから
お墓に行ってお別れをしたかったし
あなたのことも気になって
ブレッドは
じっとリサを見つめる。
うん…まぁ
お金目当てで来たのではなさそうだ
もしそうなら
もっとセクシーに着飾って来るはずだからね
いたずらな微笑みを浮かべて
ブレッドが言った。
なんて失礼なのかしら
心の中で呟きながら
リサはブレッドを睨み付ける。
で…
僕の様子は見たよね?
安心してもらえた?
えぇ
お邪魔いたしました
これで失礼します
リサは嫌みっぽく言って立ち上がり
ドアに向かって歩き出す。
あっ
と振り向き
お墓の場所を教えてください
と リサが言うと
行くつもり?
と 驚いたようにブレッドが言った。
はい
それもこちらに来た目的のひとつですから
一瞬 目を細めてリサを見たブレッドは
ソファから腰を上げてデスクに移り
メモを書いてリサに近付く。
はい これ
すぐ傍で見るブレッドは
息を飲むほど
整った顔立ちをしている。
先程は
怒りや悲しみでよく見ていなかったが
急にドキドキしている自分に気付く。
あ ありがとう
お忙しいのに
お時間を作ってくださって
ありがとうございました
どうぞ お元気で
リサは心からの言葉を
笑顔でブレッドに伝えた。
そして
ドアに向かって歩き出すと
そのリサを追い抜いて
ブレッドがドアノブを
後ろ手で握ってリサの方を向く。
僕に無礼を謝罪させてくれないまま
帰るつもり?
リサの横を通り過ぎたブレッドが
風を起こした。
爽やかないい香りが
リサの鼻をくすぐる。
立ち止まるリサに
さっきはごめんね
失礼なことを言ってしまって
まだ怒ってる?
初めて見せる
ブレッドの柔和な表情がとても素敵で
見つめられてドキドキが止まらない。
それに気付かれないように
リサは言った。
さっきまではすごく腹を立ててたわ
でも もういいの
信じてもらえたのなら
それでいいわ
よかったぁ
その笑顔に見とれるリサだった。




