第49話 不意打ち
後任理事を選出し
気持ちも新たにしたブレッドは
忙しい毎日を過ごしていた。
寂しさを感じたゴードン理事の解任の日。
リサの優しい心遣いが嬉しかった。
リサもまた
レストランのオープンに向けて
意欲的に動いている。
なかなか二人の時間がとれずにいるが
時折 一緒に食事をしながら
お互いを慈しむ気持ちを確認し合っていた。
ある日のこと
ゴードン理事の娘 トレーシーが
不意にブレッドを訪ねてきた。
突然の訪問に 驚くブレッドだったが
トレーシーもまた幼馴染み。
久しぶりだね
と 言いながら
社長室に招き入れた。
年齢を重ねるごとに
美しさとクールさを身に付けたトレーシー。
親しみのある優しいリサとは
まるで対照的だとブレッドは改めて思った。
お仕事中にごめんなさいね
今日はお願いがあって来たの
なにかな?
今月末に
私のバースディパーティがあるのは知ってるわね?
あ ああ
そうだったね
その時に
私のエスコートをしてほしいの
すぐにリサを思い浮かべたブレッドは
言葉を選びながら断りの気持ちを伝える。
えっと…
僕が適任とは思えないんだけど…
他に頼める人はいないの?
あなた以上の適任者はいないわ
父以外で
私が心を許している最も親しい男性ですもの
トレーシーは眉を上げて
きっぱりと言った。
悪いけど僕は…
その言葉を遮るように
お願いよ ブレッド
父があんなふうになって
私まで惨めなバースディを迎えろっていうの?
態度を急変させて
すがるように懇願するトレーシーに
僅かながら同情したブレッドは
じゃ
幼馴染みということで
と 渋々承諾した。
すると
もう1つ お願いがあるの
このことは
当日まで誰にも言わないで
せっかくのパーティなのに
人の噂話のネタになるのは嫌だもの
と 眉尻を下げて甘えるように言った。
あ あぁ
わかったよ
でも
リサには伝えるから
と言ったブレッドの言葉が気に障ったようで
それも止めてと言ったら?
と 今度は高飛車に言いはなつ。
この話はなかったことにしてほしい
ブレッドの強い口調に
わかったわ
彼女には事情を話して構わないから
いささか不愉快ではあるものの
要求を通したいトレーシーは条件をのんだ。
トレーシーが帰った後
ブレッドはリサの部屋をノックした。
私に会いに来てくれたの?
部屋の中からではなく
廊下を歩いてくるリサが
微笑みながら声をかけた。
リサ
よかった
ちょうど打ち合わせが終わって戻ってきたの
報告しに行こうかと思ってたのよ
じゃ
僕の部屋においで
リサの部屋には入らず
二人は手を繋いでブレッドの部屋に入った。
ドアを閉めると
繋いでいる手を引き寄せて
ブレッドがリサを抱き締めた。
あまりに強く抱き締められて
リサは少し戸惑う。
ブレッド…
どうしたの?
何も言わずに
ブレッドがリサの髪にキスをした。
ブレッド?
リサ
ごめん
リサを傷付けたくないのに
何があったの?
リサの問いかけに
腕を緩めて顔を見ながら
トレーシーのエスコートを頼まれたんだ
ブレッドは苦々しい表情で答えた。
そう
今は辛いときだもの
頼りたかったのよ
トレーシーさんもあなたの幼馴染みだもの
嫌じゃない?
嫌よ
でも 我慢する
トレーシーさんの辛さ
理解はできるから
リサ
ごめんね
謝らなくていいのよ
もしかして
それでそんなに暗い顔をしていたの?
まぁ…ね
リサに申し訳ないし
僕も気が進まない
私のことは気にしないで
ブレッドの気持ちはわかってるから
リサはブレッドの頬にキスをした。
ブレッドの瞳がリサを見つめる。
私の報告は聞かないの?
リサがからかいの色を浮かべて訊ねると
それより今は…
ブレッドはそう言って
リサの唇を奪った。




